The Economist 「出エジプト記 第1章」 訳完了

Greece and the euro: Exodus, chapter 1 | The Economist.

危機から2年経過、ギリシャが離脱すれば大混乱となる

2012年5月19日

ユーロからのギリシャ離脱の可能性は、日を追うごとに高まっている。5月6日におこなわれた最初の選挙では結論にいたらず、とりあえず暫定内閣が誕生した。6月中旬に2回目の投票が予定されている。ユーロ離脱の引き金をあきらかにひくことになるのは、ギリシャの緊縮財政計画に反対を示す選挙結果だろう。ギリシャで投票がはじまり銀行の取り付けがはじまれば、事態はさらに加速していくだろう。

銀行の取り付けが始まるのは、現金を引き出そうとして列をつくる人々から始まるのではなく、コンピユータでクリックして金を海外に移転し債権や株式、あるいは資産を買おうとする動きで始まる。ギリシャの銀行は、過去2年間で総積立金の3分の一を失ってしまっている(表1参照)。これは人々が貯金をひきだしたせいでもある。少しずつこぼれていった積立金が、近日中には膨張し始めそうな、心配される兆しがある。

ギリシャ大統領カルロ・パポプリアスは、5月14日、預金者がギリシャ銀行から7憶ユーロ(8.94憶ドル)を引き出したという中央銀行からの警告を発表した。数週間、信頼できる数字は公的なところから公開されないだろう。しかし銀行筋によれば、14日から120憶ユーロが引き出されたそうである。流出は今週になってからも続いているが、以前よりもゆったりとした速度になっている。「ほとんどの兌換貨幣はもうなくなってしまった」ということだ。「今、目にしている炎は、夜のニュースで何を言われているのかも理解できない少額預金者が貯金を引き出そうとしている姿なのだ。」

さらに心配なのは、預金流出の可能性がポルトガルやスペインのように傷つきやすいユーロ圏の国に広まることだ。「銀行取り付けの典型的なパターンは、滴がやがて洪水に変わることだ。」ある銀行筋は言う。「本当に心配なのは、ダムが決壊してしまうことだ。最初はギリシャで始まったものが、あらゆるところに広まっていくことである。今のところ他の国では、家庭では今の銀行に貯金を預けたままである。しかし大企業は、ギリシャ周辺の銀行や国から、金を引き上げはじめている。英国では地域自治体によっては、地方資本の銀行であり地域管理の銀行であるにもかかわらず、サンタンダーズ・ブリティッシュ銀行から預金を動かしているという噂である。

これから4週間にわたって、ギリシャの政局は「リンボ」、すなわち天国と地獄のはざまを経験することになる。当面の仕事とは、投票前に預金が流出する事態を沈静化することである。権威筋が信頼回復のために行うとすれば、欧州金融安定機構がこのために取り分けた新たな元手から、480憶ユーロをギリシャの銀行に注入することだろう。ヨーロッパ中央銀行は、資本構成が改められなかったことを理由に、今週、金融政策のいくつかについてギリシャの銀行との共同管理を中止した。だが、豊かな流動的資産を手のひらで自由に操る様子を見たら、預金者はもっと安心するだろう。たしかに、これはギャンブルである。もし望まれるなら、現金があるということを預金者に見せたほうがいい。そうすれば資金の流れは止まらないで、どんどん流れていくようになるだろう。

もしヨーロッパとギリシャが次の選挙まで何もしないで見物をきめこむならば、ギリシャ人がユーロ離脱を選択する政府に投票する可能性がでてくる。ギリシャの銀行関係者は、そんな事態が起きないように祈っている。「ユーロ離脱は悪夢です」あるギリシャの銀行関係者は語る。「すでに通貨があったアルゼンチンのようにはいきません。ギリシャでは経済はすぐに物々交換に逆戻りしてしまうでしょう」しかしながら、ユーロ離脱の危険性はエーゲ海のむこうから広まりつつある。

ユーロ離脱によりギリシャへの貸し主がこうむる財政上の損失は、以前よりも処理しやすいものとなった。だが、それでも損失額は巨大なものである。ギリシャのユーロ離脱による最大の犠牲者は、ヨーロッパの納税者なのである。ギリシャ中央銀行は、ユーロのメンバーである他国の中央銀行に約1000憶ユーロの借りがある。もしギリシャがこうした負債の支払いを怠ることになれば、ドイツだけで(ヨーロッパ中央銀行の資金の割合に基づいて計算すれば)約300憶ユーロになるだろう。ヨーロッパ中央銀行も、他国の中央銀行と共に流通市場で購入したギリシャ政府の負債のせいで、560億ユーロの損失をこうむる。ギリシャが救済融資の支払いを拒んだら、ユーロ圏の各国とIMFも窮地に陥るだろう。ヨーロッパは合計1610億ユーロの救済融資資金を支払ってきたが、その中にはヨーロッパ中央銀行を損失から守るために破棄した金も含まれている。IMFは220億ユーロを貸し付けている。

リスク感染による次なる問題をあげるとすれば、銀行のギリシャへのエクスポージャーになるだろう。ギリシャ政府の債権価値を切り下げ、さらにその債権を価値のないものに交換した後でも、ヨーロッパの銀行やその他の投資家たちはまだ名目550憶ユーロほどのギリシャ政府の負債を所有している。ベーレンバーグ銀行によれば、その負債はさらに資産価値を切り下げなくてはならない。

1ポンド金貨のイギリスのみが、ギリシャの債務者ではない。国際決済銀行の計算によれば、2011年末、国際的な銀行はギリシャの会社や家庭に690憶ドルの借金を貸し付けていた(表2参照)。ギリシャに一番借金を貸し付けている国は、フランスである(家庭や会社に対するエクスポージャーは、総額370億ドルになる)。そしてイギリスの銀行(ほぼ80億ドル)とドイツの銀行(ほぼ60億ドル)が続く。

こうしたエクスポージャーが、ギリシャのユーロ脱出で実際にどれほどのリスクとなるか査定することは難しい(さらにユーロにとどまるにしても、資産価値の切り下げが起きるだろう)。こうしたローンのなかには、船や飛行機の融資に使われたものもあっただろう。契約はおそらくイギリスの法のもとでかわされ、ドルで支払いが計算された。海運業のローンの場合、返済は港にとどめおくことができる資産から行われることになるが、それは積み荷を輸送する会社にとっては心配な事なのである。

非上場の会社も、貸付に大いに関係しているらしい。ギリシャ最大の上場企業の分析によれば、多くが比較的小額の負債をかかえ、シンジケートローンが広く分配されたようである。それよりリスク感染が少ないルートとしては、ギリシャの長期社債を買った外国の保険会社や年金財団がある。

もしリスク感染がギリシャから広がった場合、ヨーロッパの財政システムは更に大きな危機に直面するだろう。ギリシャのせいで明らかに危機にさらされる国はキプロスである。それと言うのもキプロスの銀行システムは、ギリシャの銀行とからみ合ったものだからだ。格付け会社のムーディズの見通しでは、もしギリシャがユーロ離脱をするようなら、キプロスの銀行は、GDPの50パーセント以上もの資金増加、ないしは90億ユーロを必要とする損失の責任をとることになるだろう。ヨーロッパの各銀行の、島国キプロスの経済に対するエクスプロージャは360億ドルになる。

スペインとイタリアの借入費用はギリシャ不安に反応して上昇しているが、その一方で、投資家に銀行の状況について安心してもらうための、スペイン政府による試みは失敗した。ギリシャ危機は、2年間にわたって延々と続いた。そして今、政策立案者が周辺国を保証するのに残されているのは数週間たらず、あるいはもっと少ないのかもしれない。

しかしキプロスは些細なことであり、もし必要があるなら難なく救出することができる。ギリシャ離脱で本当に心配されるのは、マーケットが離脱候補として他の大国に焦点をあてることである。ポルトガルとアイルランドが次にくる。スペインとイタリアの借入費用は、ギリシャ不安に反応して上昇してきている。5月17日、預金者が新しく国有化されたスペインの金貸しから10憶ユーロ引き出したという報道をうけて、スペインのバンキア銀行の市場占有率は崩壊した。ギリシャ危機は2年間続いた。そして今、政策立案者が周辺国を保証するのに残されているのは数週間たらず、あるいはもっと少ないのかもしないのだ。

 

(Lady DADA訳・B.Riverチェック)

 

Lady DADAのつぶやき・・・経済欄にも弱く、数字も苦手な私(この記事で言うと、夜のニュースで何を言っているかもわからないような人間)には結構手間がかかりました。数字が大きすぎて0を二桁くらい間違えて訳していそうで怖いです。アメリカ人のクルーグマンと比べると、当のヨーロッパ人はやはり貸した金額、損する金額が一番頭にあるようで、問題がかえって見えなくなっているのかもしれません

 

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