サキ 「耐えがたきバシントン」 18回 3章

彼女の前進をしばらくひきとめたのは一組の男女だが、彼らが熱心かつ雄弁に論じていたのは、今日の問題をいぶりだそうとしてであった。男は痩せており、眼鏡をかけ、額が後退しており、進歩的な意見をしばしば展開しては、眼鏡をかけた若い女に話しかけていたが、その女の額も同じような様子であり、しかも非常にだらしない髪をしていた。ロシアの女子学生に間違えられるということが、その娘の人生における野心であり、そのためにサモワールのどこに茶葉をいれるのか正確に突きとめようとして、数週間にわたって根気強く調査をつづけていた。かつて彼女は、オデッサ出身のユダヤ娘に紹介されたことがあり、そのユダヤ娘はその次の週に肺炎で亡くなってしまったものの、その僅かな経験のせいで、目と目のあいだがくっついている若い娘は、ロシアに関する全ての権威を引き受けていた。

「話すことは役に立つことであり、また話すということは必要とされていることである」その若い男は話していた。「だが、為すべきは御しがたい話し合いという溝から問題をひきあげ、現実的な話し合いをする脱穀場へと持ち出すことだ」

その若い娘はこの修辞的な終止符を利用すると、すでに舌先で整理してあった意見をたたきつけた。「貧困という奴隷を解放するとき、注意をはらって避けるようにしなければいけないことは、農奴を自由にしたときにロシアの官僚がおかした過ちをおかさないようにすることよ」

彼女は自分の番になると、雄弁術の効果をねらって一呼吸おいたが、息づかいが元に戻ると、その若い男と同じレベルの言葉をつかって話し始め、その男も一歩先をいって次の文へと口火をきっていた。

「ふたりとも出だしは上々ね」フランチェスカは考えた。「意見を戦わせているのは、極貧の防止のようだけど。もし平凡を予防するための運動を始めたら、ここにいる善良な人たちはどうなってしまうかしら」

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