サキ「耐えがたきバシントン」3章 20回

(これまでの話は、サキの部屋をお読み下さい)

フランチェスカの顔に咎めるような色がうかんだのは、ヨールが政治に関して賢明さに欠けるせいではなかった。原因は、コーマスだった。彼は学生であることをすでにやめており、その時には社会的に物議をかもしていたが、最近になってこの若い政治家ヨールの仲間となり、賛美者に加わったばかりであった。コーマスは政治について何も知りもしなければ、考えることもなく、ただヨールの服装を真似しているだけであり、会話も真似をしようとしたがうまくいかず、フランチェスカはその傾倒ぶりを咎める自分を正当化した。申し分のない程度の身なりで大体の日々を過ごすような女にすれば、毎日、贅をこらした格好の息子がいるということは心配なことなのである。

不快な感じをあたえるヨールの姿をみて彼女の顔には陰りがさしたが、それも太った中年の男性が気がついて歓迎の挨拶をしてくると、つぎの瞬間には自らの成功に満足する微笑みへとかわった。その男性は自分のまわりのやや貧弱な集団に、彼女が入ることを願っているようにみえたからだ。

「私たちが今話していたのは、私の新しい仕事についてなんですが」彼は愛想よくのべると、「私たち」というなかに幾分憂鬱そうな表情の聞き手を含めたが、その聞き手は話し合いの中で、どんな発言にしても何も言っていなかった。「この人たちに話していたばかりなんですが、あなたもお聞きになると面白いと思うのですが」

フランチェスカはスパルタ式の禁欲主義で、機嫌をとるような微笑みをうかべる一方で、耳の聞こえない毒蛇に耳をかまれて話を聞かなくてもよくなれば、この瞬間、その蛇は美しいものに見えると考えた。

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