サキ「耐えがたきバシントン」21回

(これまでの訳は、上のサキの部屋をお読みください)

ジュリアン・ジュル卿は下院の一員であるが、下院を特徴づける高い基準とは情報につうじた平凡さであるため、卿は環境によくとけこみ、議会の進行を注意深く見守る者でさえも、下院のどちら側の席に卿が座ったのか思い出すことはほぼ無理であっただろう。与党によって卿にあたえられた男爵の地位は、少なくともそうした曖昧さをとりのぞいてくれた。数週間後、彼は西インド保護領のどこかの総督になった。準男爵の地位を受けいれた報酬としてなのか、それとも西インド諸島の人たちが、自分たちにふさわしい総督をむかえるという考えを実践した結果としてなのか、それは何とも言い難いことである。ジュリアン卿にとって、その地位は確かに、重要なことの一つであった。彼が総督をしている期間に、もしかしたら皇室の人々が訪れることがあるかもしれないし、あるいは地震が起きることもあるかもしれない。どちらにしても彼の名前は新聞にのることになるだろう。でも一般の人にすれば、こうしたことはまったく関心がもてないことであった。「彼は誰なのか、どこの話なのか」という問いかけが、事件について個人的な、あるいは地理学的な面についての一般的な情報を正確に要約しただろう。

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