クルーグマン「財政に巣くう詐欺師たち」NYT

201211年5月27日

Fiscal Phonies – NYTimes.com.

ショート・クイズをどうぞ。「ニュージャージー州の共和党知事クリス・クライストを、最後がyで終わる5文字に言いかえると何になる?」

最初にでてくる答えはもちろん、「bully(いじめっ子)」だ。しかし州予算をめぐって最近おこなわれたディベートを見ると、「phony(詐欺師)」も同じくらい妥当な答えだ。そしてクリスティが詐欺師なら、クリスティと同じ共和党の連中も詐欺師だ。

これまでも、財政に巣くう詐欺師という攻撃はされてきたけれど、それは州レベルの話ではなく、主に国家レベルでの話であり、ふさわしい例をあげるなら予算委員長のポール・ライアンだ。このコラムをいつも読んでいる読者ならわかるだろうけど、ライアンは容赦なく財政を食らうタカ(詐欺師の意)という世評をとりつけてきた。ライアンがだしてきた予算案は赤字削減に焦点をあてたものからは程遠く、主として富裕層への税金を削減するものであり、貧しい人々や運に恵まれなかった人々への援助を削減するものだ。実際、ライアンの「魔法のアスタリスク」を取り去ればーーーなんとかして歳入を増やし支出を削減するつもりだというが、具体的な策について語ることは拒んでいる。手元に残されるのは、政府の負債を減らす案ではなく、ただ増やすことになるだろう案なのである。

同じことは、ミット・ロムニーについてもあてあまる。ロムニーの主張では予算のバランスをとるつもりだそうだが、実際の提案は、主として巨額の税金の削減(もちろん、企業と富裕層のための減税である)から構成され、国防費については削減しないという約束が付け加えられている。

ライアンにしても、ロムニーにしても、二人とも赤字については詐欺師まがいの人物である。二人のペテンを証明しているのは、ひどい計算能力だけではない。予算不足を心配していると表面上は主張しているけれど、心配しているからといって何かをあきらめるわけでもない。それどころか何一つあきらめていない。ライアンやロムニー、それから二人の支援者たちは欲しいものを何もあきらめていない。二人は赤ん坊の口から食べ物をつかんで奪い取ろうとしているのだ(それはまさに、栄養摂取計画への厳しい削減のことである)。さらに二人の視点からも明白なことだが、ライアンの言葉によれば、社会的な安全網とは「健全な体の持ち主を、生活保護や自己欺瞞であやすハンモック」であってはいけないとのことだ。利益や所得への税は低くおさえ、更にこうした税の削減についての批判は、どんな方法であれ許されないことなのである。

今でもライアンとロムニーは、国中の聴衆にむかって演じ続けている。共和党の知事は厳しい予算の制約に対処しなければいけないが、その姿はぶざまなのだろうかと。これは論議をよんだ。とりわけクリスティが広く支持されてきているのは、少なくとも彼自身の力によるものではなく、厳しい選択をしようとする姿が政治家の一例として支持されてきたのだ。

しかし先週、クリスティが実際に冷酷な選択にせまられる姿を目にすることになった。大声でわめいて影響を与えることは別にして、クリスティは自分から財政に巣くう詐欺師の一人にすぎないことを証明した。

以下がその話の詳細である。以前、クリスティはいわゆる「ジャージー・カムバック(ニュージャージーに戻っておいで)」を奨励していたた。最近でも言動が暴走しているけれど、以前からクリスティには何を言っているんだか意味不明のところがあったのである。たしかにクリスティが知事の座についてから、州には成金趣味の建物が建ち、職がふえてきた。けれど、それは増えたといっても遅々とした増加であり、国全体でみても、あるいはニューヨークやコネチカットと比較してみたところで遅々とした増加であることに変わりない。

それでもクリスティが断固主張するところによれば、ニュージャージーには皆が戻り始めているという。しかも見当がつくだろうけど、それを口実にして、資産家が儲けている現状にもかかわらず減税を行うそうだ。

そして先週、現実がクリスティに攻撃をかけてきたというわけだ。無所属で、どの党派にも所属していない予算分析家ディヴィッド・ローゼンが議員たちに警告したのだが、それによればニュージャージー州は13億ドルの赤字に直面しているという。クリスティ知事の反応やいかに。

まずは、指摘してきたローゼン氏当人への攻撃だ。ローゼン氏は経験をつんだ公務員であり、職務では州知事のクリスティよりも正確に、予算の予測をたてている。でもクリスティにかかれば、ローゼン氏も「ケホーキアン博士(不治の病に苦しむ大勢のために自殺機械を発明した人物)」になってしまう。なんて慇懃無礼な奴。

でもクリスティのもとで働く公務員ですら、予算の不足額が大きいだけでなく、深刻な事態であることを予測している。更に二つの信用格付け会社ムーディズとスタンダード・エンド・プアーズも、最近、ニュージャージーの州予算について警告した。スタンダード・エンド・プアーズによれば、知事の楽観的な歳入見通しのせいで、州の予算は「構造的に不均衡」だということだ。

ニュージャージーの経済状態は、いまや不吉な状況にある。強情な知事も、さすがに十八番の減税を考え直すのだろうか。意味不明の言葉で、「Fuhgeddaboudit(そんなことは忘れちまえ)」とでも言うのだろうか。クリスティはそうする代わりに、窮地をその場しのぎの予算のからくりでごまかそうと望んだ。交通機関への投資のための借入金を減少させるという約束を反古にしてしまい、クリーン・エネルギー計画から資金を流用したのだ。財政上の責任追求については、このくらいで止めておく。

予算が限られていることから癇癪をおこすせいで、クリスティがロムニーのジョギング仲間になるかもという見方は終わりをむかえるのだろうか?私にはわからない。でも、本当はそんなことは問題ではない。ロムニーが誰を選んだのであれ、それが男だろうが女だろうが、予算が破産するまで喜んで一緒についていくだろう。そして前の知事が勝利していたらなら実現していたはずの、ロビンフッドのような政策へと逆回転させるだろう。

現代のアメリカ右翼は、赤字のことを気にかけていない。昔から気にかけていなかったのだ。負債についての話といえばすべて、メディケアやメディエイド、社会保障、フードスタンプを攻撃するための理由にすぎなかった。クリスティに言及するなら、財政に巣くう詐欺師の一人にすぎない。ほかの詐欺師と区別できるのはは、ただ悪口が好きだという点においてなのである。(Lady DADA訳・BlackRiverチェック)

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