サキ「耐えがたきバシントン」Ⅴ章 42回

リージェントパークにあるロンドン動物園の北の雉飼い場に面した、都合よく奥まったベンチに腰かけて、コートニー・ヨールは大人の恋の戯れに夢中になっていた。相手の女性は、たしかに外見は若いけれど、四、五歳はコートニーより年上だった。コートニーが十六歳の学生だった頃、モリー・マククェードが個人的に動物園に案内してくれた後で、ソーホーにある外国料理のケトナーズ・レストランでご馳走してくれた。それ以来、昔の祝祭日を祝う記念日に町にいることがあれば、信心深くも、この日程をそのまま繰り返した。夕食の献立も、可能なかぎり、そのときと近いものにした。学生らしいはにかみで遠慮しながらも、元気あふれる学生が数年前に選んだ食料やワインが、こうした機会にヨールに対峙する有様は、まるで溺れかけている男の過去の人生が、意識のある最後の時に立ちあがって歩き回るようにと言われているようだった。

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