サキ「耐えがたきバシントン」Ⅶ章75

フランチェスカは別の卓へとうつると、運がうわむいてきたせいで、勝って損失の大半を取り戻すことに成功した。女主人に別れを告げるときには、満足しているという感覚に明らかに支配されていた。サン・ミッシェルの噂話やその話が語られる有様は、状況の現実についての糸口を彼女にあたえてくれた。それは僅かなものであり、おぼろげながらも、少なくとも望ましい方向を示していた。最初、彼女がひどく怖れていたのは、自分の希望をうちくだくような明確な発表を聞くことであったが、詳しい話はされたけれど、そこにはいつもならサン・ミッシェルが好んで提供しようとする確実だけれど、子細にわたる細かい話がなかったので、頭をはたらかせてだした当てずっぽうの答えにすぎないという結論に彼女はたっした。もしレディ・キャロラインがエレーヌ・ド・フレイとコートニー・ヨールの婚約が本当だと信じているなら、悪意にみちた喜びを感じながら、自信にみちたサン・ミッシェルを励まし、朗読会を聞いているフランチェスカの狼狽を見ようとしたことだろう。話を早々とうち切るという苛々した様子は、事実に反するからであり、すなわち、その老女がつかんだ情報でいえば、独占しているのはコーマスであって、コートニー・ヨールではないということだった。とりわけ、この特別な状況に関して、レディ・キャロラインの情報のほうが、サン・ミッシェルの自信にみちた噂話よりも真実に近いところがあった。

 

フランチェスカはブリッジでうまくいったときには、最初に出会った交差点の掃除夫かマッチ売りに1ペニーやることを常にしていた。小競り合いから解放された今日の午後、嫌な相手に15シリング払うことになったけど、バークレー・スクェアの北西の角にいた掃除夫に、いわば神への感謝の捧げものとして、彼女は2ペニーをあげたのだった。

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