サキ「耐えがたきバシントン」Ⅸ章94回

エレーヌとコーマスが甘いひとときを過ごしていたのは、公園にある席代が二ペニーの椅子であった。その椅子を引っぱってきたのは、くっつくようにして腰かけている人々のところからだが、人々がそうして腰かけている有様は、植物が植えられているようでもあり、また芝生が広がっているようでもあった。コーマスはしばらく好戦的な陽気さにかられ、辛辣な批判をとばしたり、逸話を気前よく語ったりしたが、その矛先となっているのは、個人的な知り合いだったり、顔見知りである散歩をしている人や、逍遙をする人についてであった。エレーヌはいつもより静かであり、レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画の、まじめくさった表情は、今朝ひときわ強ばっていた。 時間をかけた求愛のあいだ、コーマスがもっぱら頼るのは、身体的魅力であり、機知に富んだ冗談をとばし、上機嫌になることであった。こうした愛嬌のおかげで、エレーヌの目にうつる彼の姿は、とても望ましいものであり、どちらかといえば愛すべき存在であった。だが嫌悪を顧みようともしないせいで、彼は常に危険にさらされるが、その嫌悪とは他の人がいだいている関心や願望に赤裸々なまでに無関心なせいであり、ときにはエレーヌにまで無関心なせいであった。そういうわけで彼のことが好きになればなるほど、自分への配慮が欠けていることに彼女は苛立つのだった。

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