サキ「耐えがたきバシントン」 Ⅸ章 96回

コーマスが返してくれていない貸しが少しばかりあったが、エレーヌにはその金を惜しむ気にはなれなかった。だが、貸した金の使い方を見ていると、嫌悪の念にかられ不安におちいるのだった。コーマスのなすことから邪悪さを切り離すことは不可能に思えた。借りた金を使い果たす有様は人目をひくものでもあり、何の利益にもならない乱費であり、そのせいで高位聖職者たちに躾けられた彼女は憤りを感じ、彼のことをよく理解できるとも思わなければ、満足を感じることもないのであった。こうした落胆を繰り返すうちに、彼女の愛情がそっと遠ざかっていったのは驚くべきことではなかった。だが、その朝、公園にきたときに胸にひめていた期待とは、穏やかに口説かれていくうちに優しい気持ちになって忘れてしまうだろうというものであり、そのような気持ちになることを強く願うあまり、かえって優しくなれないでいた。コーマスに腹をたてるのももっともなことであり、彼が発揮すべき術を心得ている魅力に頼って、親しくしようとなだめてくることに喜びを感じつつも腹をたてるのであった。

 

 

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