サキ「耐えがたきバシントン」Ⅹ章103回

「もちろん彼がぜったい正しいわ」レディ・キャロライン・ベナレスクはいうと、キャビアのサンドイッチが山盛りされた皿をひきよせて、その皿に簡単に手が届く場所に席をとっている令嬢たち三人組からキャビアのサンドイッチを救い出した。「芸術とは」彼女は言葉をつづけながら、ポルテイモール・ヴァードン師に語りかけた。「土地にむすびついて栄えてきた。たしかにロンドンはどの視点から考えても、ヴェニスよりも大切かもしれない。でも肖像画という芸術は市長とは関わり合いをもたないものなのに、ドジェスの足もとで卑屈にうずくまっているじゃない。社会主義者として、アビニョンのようにロンドン西自治区の権利を認めざるをえないけど、このふたつを美術館に同じように並べるわけにいかないわ」

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