サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 11章117回 

鋭い洞察力で議会を観察する者なら、彼女に警告しただろうが、政治の世界において、ヨールは現在よりも高い地位につくことはないだろう。野党の自由な論客として華々しく活躍し、先頭にたって政府の退屈かつ目的のない外交政策を攻撃はするが、その政策は攻撃するほどのものでもなければ、外交関係の手腕について祝辞をのべるというほどのものではなかった。若い政治家には人柄にも、信念にも強固なところがなかったので、戦いの最前線にたち、自らの助言にすぐれた価値をあたえることはなかった。だが、その一方で不誠実さもさほどのものではなかったので、人々の指導者として、政治的な運動をかたちづくる者として、故意に、うまく立ち回ることはできなかった。それでもつかの間であれ、公の場における彼の立場は注目をあびるものであり、群衆としてではなく個人として尊重される世界に、安全な地盤をあたえてくれるものであった。その妻になろうとしている彼女も、意志と手腕があれば、重要人物となる機会をつかむだろう。

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