サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 Ⅺ章 124回

エレーヌには彼がきわめて面白い人物に思えたので、もしそうした行動が必要であれば、きっと相手をひきだそうと努力したことだろう。彼女は悦にいりながら理解し、相手に耳をかたむけたが、それは悲劇の舞台をみるときに人々が、いつでもその災難から、ただ席を立つだけで抜け出してしまうような理解の仕方だった。ついに彼が意見の流れを時計に目をやりながら確認し、もうよそへ行かなければいけないと告げたとき、その宣言に賛成票をいれてしまいそうになり、手をあげて決議に賛成する旨を示すところだった。

 

その青年は人々に急いで別離を強いたが、それでもシュゼットが示した正確な程度の、省くのも、ふみこえてしまうのも不適切な、優しい親密さのおかげで和らげられた。それからエレーヌは、心からの祝福を期待している様子のいとこの方へとむいた。

 

「わたしからみても、まさに彼はあなたにうってつけの夫だと思うわ、シュゼット」

 

その日の午後になってから二度目のことだが、シュゼットは所有しているものへの熱意が冷めるのを感じた。

 

ブランクレー夫人は、訪問客の判決に皮肉めいた祝福のひびきを感じた。

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