サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」11章 127回

エレーヌが長々と、優しい言葉で語ろうとした出来事について、語る彼の言葉はこれがすべてであったが、彼女の人生と彼の人生における重要な章がとじられた。その手紙には後悔の跡もなければ、叱責の跡もなかった。彼女が歩み去っていったように、彼もまた突如として、ふたりのお伽の国から歩み去っていった。しかも、どう見てもくよくよ思い悩んでいるようではなかった。その手紙を幾度読んでも、それが敗北にたいして勇気をふるってのからかいなのか、それとも失ったものにコーマスがいだいていた真の価値を表現しているのか、エレーヌは結論をだしかねるのであった。

 

さらに彼女にはわからないだろう。もしコーマスに完璧なまでの天賦の才があるとすれば、運命が厳しく彼を打ちのめすようなときでも、その運命を笑う資質だろう。でもある日、おそらく笑いも嘲りも、彼の唇のうえで静まりかえるだろう。そう、最後に笑う強みをもつのは運命なのである。

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