The Economist「ユーロという患者を殺すつもり?」

2012年6月2日

Charlemagne: Killing the euro-patient? | The Economist.

医者の考えでは、ユーロが先に死ななければ薬は効くだろう

欧州委員会は、今週、ヨーロッパ経済の健康診断を発表したが、その意見によれば、超現実的に思えるとのことだ。「薬は効き始めている」欧州委員会委員長のホセ・マニュエル・バロソは語った。差し迫るギリシャ離脱の警告とスペイン債値幅の手に負えない変動のことは忘れよう。国庫の不足額は下がり、他の不均衡も是正されつつあるという吉報がある。そこで医者は同じような処方をだした。すなわち緊縮政策、構造改革、脱税との戦いである。しかし自信があるようにみえるにもかかわらず、欧州委員会は治療について再度考え直している。

活力みなぎるドイツは計画より早く修正し、「過剰な赤字処理」から解放されている。ブルガリアも同様に赤字から解放され、規律とはただ強くなるためのものではないと証明している。ドイツ、ブルガリアは、エストニア、フィンランド、ルクセンブルグ、スェーデンと共に、赤字処理の目標に到達したクラブに入ることになる。ハンガリーは総合的な見地から不承認となったものの、今では赤字に取り組むことを承諾している。そこで欧州委員会は援助保留の脅しを取り消すことを勧告した。

欧州委員会の官僚は、このような事態を、経済的な政府が機能している証拠とみなしている。ブリュッセルの欧州委員会は、いわゆるヨーロッパ学期のもとで国庫と経済政策を監視し、その国にあわせた勧告をしている。その勧告はヨーロッパ連合27カ国各国のために、1500ページにおよぶ分析、診断、処方箋から成り立つ。もし名指しして恥をかかせても政府の改革への取り組みが不十分であれば、欧州委員会には制裁を示唆する権限がある。発言権のある国の大臣から反対されなければ、欧州委員会には強制することができる。

しかし、これは欧州委員会が小国にムチをふるうということである(今年はじめ、ベルギーで欧州委員会は認めた)。しかし、フランスのような大国がブリュッセルからの指示に従うだろうか。欧州委員会が述べたところによれば、フランスは来年、赤字をGDPの3パーセント以下に削減するという目標を達成できず、赤字削減対策を「加速」して取り組まなければいけないということだ。実際、フランソワ・オランドはヨーロッパを緊縮政策から転換させるという公約のもと当選したが、ヨーロッパからは更なる緊縮財政を求められ、しかも速やかに行う必要があると言われている。

構造改革と規制緩和に関する勧告の多くは、オランド氏の口にはほとんど合わないだろう。フランスは、今年、徹底的な調査結果に従わなくてはならない12カ国のうちの1カ国である。フランスは「深刻な不均衡」に直面していて、とりわけ競争力が衰退し、輸出が落ち込んでいる。赤字に関して、過剰な不均衡を直そうとして失敗したことは、罰をのがれることはできない。「繰り返し罪人にならなくてはいけない」欧州委員会の官僚は説明する。「だが、もし各国が勧告書をトイレットペーパーのように使えば、勧告についての罰則を正当化するだろう。」

ヨーロッパの多くの国では、とりわけ南部では、成長の可能性を高めるために、重大であるにもかかわらず、先延ばしされてきた構造改革を必要としている。しかし欧州委員会の勧告は、心臓発作を起こしそうな兆候を無視して、腫瘍の化学療法を処方するようなものである。ギリシャは不況下にあり、来月の2回目の選挙でおそらくユーロを離脱することになるかもしれないが、その見通しは不鮮明である。それとは別に、スペインの銀行の不良債権は、ユーロゾーンで4番目に大きい経済を押しつぶしてしまいそうである。来月のサミットでは「投資」をふやす短期対策が認められるだろうが、その短期対策をあおるよりも、他に取り組むべき課題がもっとあることを欧州委員会は知っている。

過去2年間、欧州委員会は各国に、とりわけ問題を抱えた国に、赤字の目標にこだわることが、マーケットでの信頼回復につながる最高の方法だと説いてきた。それが今スペインには、赤字目標にこだわりすぎないように説いている。2011年の9パーセントから、来年は3パーセントの赤字目標に変更したが、あまりにも急激な調整である。弱体化した状態で欧州共同市場がこのほど認めたのは、さらに厳しい赤字削減のせいで危険かつ深刻な不況を引き起こすかもしれないということだ。そこで欧州委員会は、マドリッドにもう1年猶予をあたえ、目標の達成は2014年でよいとした。その条件とは、スペインは銀行を整理し、2014年までに信頼できる予算を作成し、とりわけ各地方にも同じ作業を課すというものだ。

変化を示す別なサインは、欧州委員会が「28番目」の国にだした勧告である。28番目の国とは、ユーロ圏全体である。それによれば、精算のほとんどを赤字国がするが、残りの国も「貢献することができる」そうだ。欧州委員会が説き伏せて、ドイツが自国経済を刺激してインフレーションになるように期待したいところであるが、それもかなり難しそうである。しかし、そうすれば「不必要な規制」を取り除くこともできるし、「国内の需要への他の制約」も取り去ることができるだろう。

本当の治療方法

成長への一番大きな拍車となるものは、ユーロ生き残りへの不透明な部分をぬぐい去ることだ。オランド氏が当選したことで、ブリュッセルは将来への足どりについて、もっとオープンに話せるようになった。その足どりには、ヨーロッパレベルでの「銀行の統合」と「財政の統合」(負債の共同発行も含まれる)がある。バルバソ氏の見解では、時間がかかるかもしれないが、こうしたことが始まれば、単一通貨の「信頼性と撤回不可能」という自信を取り戻すことになるだろうということだ。

しかしながら二つの問題がある。一番目は、ギリシャ(あるいはスペイン)がまもなく爆発するだろうという問題である。スペインは、更なる公債発行を避け、自国の銀行のためヨーロッパの現金を近いうちに必要としてくるだろう。二番目は、「更なるヨーロッパ」が深刻な政治的問題になるということである。ドイツは来年度の連邦選挙をひかえ、弱いユーロのメンバーを救うため、金をこれ以上賭けることに消極的である。もっと問題なのは、EU全体の市民が「ひとつのヨーロッパ」という計画への夢を失いつつあることだ。

今週ポー・リサーチ・センターがおこなった世論調査によれば、8カ国においてほとんどの人々が、EUは国の経済を弱体化すると考えている。EUの一員であることが「良い」と賛成したのは、多くの国で本当に少数派である。フランス、イタリア、スペインでは多くの人が、今ではユーロは「悪い」と考えている。すべての国で多くの人がユーロ存続には好意的である。しかし、ユーロとは心配のつきまとう脆弱な基盤であり、その上に、巨大な、通貨の経済連合が築かれているのだ。 (Lady DADA訳・BlackRiverチェツク)

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