サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 Ⅻ章 132回

「くだらない話がひろまっているようね」フランチェスカは指摘すると、愚かしいその話を語っている当事者にむかって批判をしたのだという満足感をおぼえた。災難がふりかかってきた今、その重みをひしひしと感じ、悪い知らせを伝えにきた人物に心底嫌悪を感じた。その人物は悦に入り、彼女のお茶菓子をかじりながら腰をおろし、退屈な小話の屑をあしもとにばらまいた。不運を告げ、敗北を伝える使いの者を殺すという東洋の専制君主にありがちな傾向に、彼女は共感したくもあり、少なくとも理解したいような気がした。さらに自分の願いと望みはただ一つ、エレーヌを義理の娘としてむかえる可能性にあるということをサン・ミッシェルは知っているのだ。この下品でつまらない魂の持ち主がきりだそうとして、喉をごろごろ鳴らしている話題の裏には、不吉なものがあることがたやすく理解できた。何度も刺すように繰り返される試練に、礼儀正しい忍耐力をもって彼女はのぞんだのだが、だが幸いなことに、サン・ミッシェルは、その日の午後、せわしくあちらこちらを訪問するために、ヨールとド・フレイの婚約をつげている新聞を買い占めるという勤めをあわただしく、でも徹底的に遂行しようとしているのだった。

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