サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 Ⅻ章134回

コーマスについて、その浪費癖についても、扱いにくい性質についても、フランチェスカは毎日心配していたのだが、好都合な結婚をするかもしれないという見とおしがついたことで、不安も少しずつ静まっていっていた。その結婚をすれば、彼はろくでなしの山師から、裕福な怠け者に変わるだろう。野心にあふれる妻から、そのときどきの影響をうけていけば、彼も人生に明確な目標をいだくようになっただろう。その期待は消え失せ、残酷な悲しみとなった。そして不安がふたたびつきまとうようになったが、かつてよりも執拗な不安だった。彼女の息子は、結婚という市場で好機をつかんだにもかかわらず、それを逃してしまった。今後、もし他の持参金つきの娘に注意をむけたとすれば、財産目当てだと思われるだろう。それは賞賛に値する求婚者まで、遠ざけてしまう障害となるだろう。彼のエレーヌへの好意はあきらかに本物だった。その好意のなかに、更に深い感情をよみとることもできただろう。自分を助けようとする気持ちをたぎらせていたのに、手の届くところある魅力的なひとをかちとるのに失敗してしまったのだ。

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