サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 15章177回

「だから英国の方々は、大変な動物好きなのですね」若い外交官はつづけた。「自分自身がすばらしい動物だから、動物好きなのですね。あなた方英国の方が活発なのは、活発でいたいからであって、人に見られているからではないのです。ムッシュー・コートニーも、たしかに動物だといえますね。これは大いに讃えるつもりで言っているのですよ」

「私も動物かしら?」エレーヌはたずねた。

「あなたは天使だと言うつもりでいました」ロシア人はややうろたえていった。「でも私には無理なことのようにも思えるのですが。天使と動物が、いっしょにやっていくことはできません。動物といっしょにやっていくためには、あなたにユーモアの感覚が必要なのです。でも、天使に何らかのユーモアの感覚があるとは思えないのです。天使に冗談は聞こえないのですから、ユーモアは役にたたないのです」

「おそらく」エレーヌはいったが、その声には苦い響きがあった。「おそらく私は不活発な人間なのでしょう」

「あなたを見ていると、絵画を思い出すのです」ロシア人はいった。

エレーヌがその直喩を聞くのは初めてのことではなかった。

「そうかもしれないわ」彼女はいった。「レオナルド・ダ・ヴィンチの作品を展示しているルーブル美術館のナロウ・ギャラリーみたいなものかしら」

あきらかに彼女があたえる印象とは、外見そのものを反映していた。

 

コートニーも自分のことをそう見ているのだろうか?他のひとの勝利や悲劇をうつしだす偽の背景となり、飾りたてた背景となるということが、人生における自分の役割であり、立場なのだろうか?どういうわけか今宵は、堂々たる部隊を戦場に派遣しながらも、その部隊をどうにもできないでいる将軍のように思えた。若さもあれば、容姿もすぐれ、相当の資産をもちあわせ、ほとんどのひとが満足できるものだと考える結婚をしたばかりだった。それなのに指導的な役割を演じるように期待されている場所で、傍観者としてわきによっているような気がした。

 “I think that is why you English love animals so much,” pursued the young diplomat; “you are such splendid animals yourselves.  You are lively because you want to be lively, not because people are looking on at you.  Monsieur Courtenay is certainly an animal.  I mean it as a high compliment.”

“Am I an animal?” asked Elaine.

“I was going to say you are an angel,” said the Russian, in some embarrassment, “but I do not think that would do; angels and animals would never get on together.  To get on with animals you must have a sense of humour, and I don’t suppose angels have any sense of humour; you see it would be no use to them as they never hear any jokes.”

“Perhaps,” said Elaine, with a tinge of bitterness in her voice, “perhaps I am a vegetable.”

“I think you most remind me of a picture,” said the Russian.

It was not the first time Elaine had heard the simile.

“I know,” she said, “the Narrow Gallery at the Louvre; attributed to Leonardo da Vinci.”

Evidently the impression she made on people was solely one of externals.

Was that how Courtenay regarded her?  Was that to be her function and place in life, a painted background, a decorative setting to other people’s triumphs and tragedies?  Somehow to-night she had the feeling that a general might have who brought imposing forces into the field and could do nothing with them.  She possessed youth and good looks, considerable wealth, and had just made what would be thought by most people a very satisfactory marriage.  And already she seemed to be standing aside as an onlooker where she had expected herself to be taking a leading part.


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