サキの長編小説 「耐えがたきバシントン」 17章197回

かたわらの小卓には、マーヴィン・ケントックの描いた彼女の肖像画があった。それは彼女の悲劇を予言する象徴の品だ。富める死者が刈りとっているのは、この世のものではなく、非現実的なものであり、終わることのない冬の、暗澹とした荒んだ景色だった。冬の世界では、あらゆるものが死にたえ、ふたたび目覚めることはないのだ。

 

 フランチェスカは、ドレスのポケットにいれた小さな封筒に目をむけた。のろのろと彼女は封をあけ、短い伝言を読んだ。すると心が麻痺してしまい、長いあいだ腰をおろしていた。長く思えたが、もしかしたら数分にすぎないのかもしれなかった。玄関ホールから、彼女をさがすヘンリー・グリーチの声がひびいてきた。あわてて彼女は紙片をくしゃくしゃにして隠した。もちろん、彼にも言わなくてはいけないだろう。だが、その苦しみがあまりに辛すぎるので、その思いを露わにすることができなかった。「コーマス シス」という一文は、彼女から話す力をうばってしまうものだった。

On a small table by her side was Mervyn Quentock’s portrait of her—the prophetic symbol of her tragedy; the rich dead harvest of unreal things that had never known life, and the bleak thrall of black unending Winter, a Winter in which things died and knew no re-awakening.

Francesca turned to the small envelope lying in her lap; very slowly she opened it and read the short message.  Then she sat numb and silent for a long, long time, or perhaps only for minutes.  The voice of Henry Greech in the hall, enquiring for her, called her to herself. Hurriedly she crushed the piece of paper out of sight; he would have to be told, of course, but just yet her pain seemed too dreadful to be laid bare.  “Comus is dead” was a sentence beyond her power to speak.

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