アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」14章93回

それにもかかわらず、彼はジェイゴウの人々に、これまで経験したことがないような影響をおよぼした。そのひとつに、信じられないほどの洞察力をそなえていると思われるあまり、畏怖の念をいだかれるようになったということがあった。ジェイゴウの人々は卑劣なほどずる賢く、狡猾そのものであり、ほとんどの余所者は心が折れてしまうのだが、彼の冷酷なまでの知性にむかい合うと、そのずる賢さも敗北を喫するのだった。そして悪知恵のはたらく浮浪人は、彼らの言葉にしたがえば「ブロードストリートのように抜け目ない」ので、最初のうちは拗ねたり、ひるんだり、すぐに見抜かれるような嘘をついたりしたが、じきに彼をだまそうとする望みも、試みも破棄した。このようにして、彼は敬意を獲得した。自分はジェイゴウの人々の金づるにならないという姿勢を、彼は一度はっきりみせ、理由のない心づけをほどこすことは拒み、数シリングだまされることも、石炭をくすねられることも、毛布でいじめられることも拒否した。やがて彼の心にはっきりと形をあらわしたのは、慈善の心であり、神の慈しみであり、正確なまでの判断と抑制だったので、愛情とひとしい敬意をいだく人々を所々で見かけるようになった。やがてジェイゴウの人々は、彼のことをファーザー・スタートと呼ぶ慣わしに、時間をかけながらも親しんでいった。

Still, he had an influence among them such as they had never known before. For one thing, they feared in him what they took for a sort of supernatural insight. The mean cunning of the Jago, subtle as it was, and baffling to most strangers, foundered miserably before his relentless intelligence; and crafty rogues—’wide as Broad Street,’ as their proverb went—at first sulked, faltered and prevaricated transparently, but soon gave up all hope or effort to deceive him. Thus he was respected. Once he had made it plain that he was no common milch-cow in the matter of gratuities: to be bamboozled for shillings, cajoled for coals, and bullied for blankets: then there became apparent in him qualities of charity and lovingkindness, well-judged and governed, that awoke in places a regard that was in a way akin to affection. And the familiar habit of the Jago slowly grew to call him Father Sturt.

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