アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」14章99回

ジョシュが上着のしたに隠しもっていたのは、ニッケルでめっきされたアメリカ仕様の、小さな置時計だった。そこで少しその時計のことを打ち明け、きっぱりと不服申し立てをした。「してませんよ。だから助けてください、神父さま。正直で、ちっともやましいところのない取引をしてきただけです、神父さま。物と交換してきただけです。まじめに宣誓供述書に手をかけて誓いますよ。ただ、それだけの話です、神父さま。正直な話をいえば」

「そうかい、ジョシュ。それが手に入れたものなら嬉しい話だ、ジョシュ」スタート神父は、まだジョシュのボタン穴をいじりながら、話をつづけた。「お前は時間を守るような、熱心な信者ではけっしてないからな、ジョシュ。でも、そうした生活をあらためる心づもりをしたというなら嬉しいよ。もう言い訳はできないぞ、いいか。日曜日の朝、時間きっちりに来るんだ。忘れるんじゃないぞ。待っているからな」それから、もう一度、スタート神父は握手をすると立ち去ったが、ジョシュ・ペローは心をきめかねたような笑みをうかべながら、教会への招待をなんとか受けとめようとしていた。

 たしかに時計は交換して手に入れた物だったが、やましいところがまったくないわけではなかった。事実はこういうことだ。その朝はやく、ジョシュがブリック・レーンの角を大急ぎで曲がったとき、9ポンドか10ポンドのタバコの包みをかかえていた。そこであとから、その角を急いで曲がってきた者たちを意識した。彼が次の角を曲がらないうちに、その角を曲がってきた者たちもいた。ジョシュの姿が、後ろから来る者たちの前にさらされたので、抜け目なく、タバコの包みを処分してから、ミーキン・ストリートに飛びだすことにした。こうしたことができる場所が一か所あったが、それはウィーチさんの店だった。ぬかるんだ裏庭があるのは、ミーキン・ストリート裏手の、いりくんだ路地の奥で、そこにはウィーチ氏の裏塀があった。ジェイゴウではめずらしいことではないのだが、不正な手段で追い立てられると、塀から略奪品を投げ込み、人ごみに戻ってから、アーロン・ウィーチ氏を訪れて、略奪品をできるだけ早く金に換えた。この作戦そのものは単純で、中庭をつかうことで楽に遂行することができた。だが逼迫した場合だけのことだった。アーロン・ウィーチ氏は卑しい雇い主にすぎず、こうした状況のように取引で優位にたっているなら、さらに人物が下卑てくるからだ。だが今回は、この戦略をとる必要があるように思えたので、ジョシュはぬかるんだ裏庭へむかうと、塀から包みを落とし、口笛をおおきく吹いた。それから裏庭をはなれ、もとの道の歩道へと戻った。

‘Well, I’m glad you thought to get it, Josh,’ Father Sturt pursued, still twitching the button-hole. ‘You never have been a punctual churchgoer, you know, Josh, and I’m glad you’ve made arrangements to improve. You’ll have no excuse now, you know, and I shall expect you on Sunday morning—promptly. Don’t forget: I shall be looking for you.’ And Father Sturt shook hands again, and passed on, leaving Josh Perrott still grinning dubiously, and striving to assimilate the invitation to church.

The clock was indeed an exchange, though not altogether an innocent one: the facts being these. Early that morning Josh had found himself scrambling hastily along a turning out of Brick Lane, accompanied by a parcel of nine or ten pounds of tobacco, and extremely conscious of the hasty scrambling of several other people round the corner. Some of these people turned that corner before Josh reached the next, so that his course was observed, and it became politic to get rid of his parcel before a possible heading-off in Meakin Street. There was one place where this might be done, and that was at Weech’s. A muddy yard, one of a tangle of such places behind Meakin Street, abutted on Weech’s back-fence; and it was no uncommon thing for a Jago on the crook, hard pressed, to pitch his plunder over the fence, double out into the crowd, and call on Mr Aaron Weech for the purchase-money as soon as opportunity served. The manœuvre was a simple one, facilitated by the plan of the courts; but it was only adopted in extreme cases, because Mr Aaron Weech was at best but a mean paymaster, and with so much of the upper hand in the bargain as these circumstances conferred, was apt to be meaner than ever. But this case seemed to call for the stratagem, and Josh made for the muddy yard, dropped the parcel over the fence, with a loud whistle, and backed off by the side passage in the regular way.

 

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