アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」17章123回

スタート神父はディッキーと会話をつづけ、やがてその少年は優越感にひたるあまり、ほとんどイグサを編むことができなくなってしまった。ディッキーよ、お前は、毎日働きたくないのか、それから賃金をもらいたくないのかとスタート神父はたずねた。ディッキーはうまい答えを見つけることができなかった。だが断固として、しかも真面目に心から、そうしてみたいと考えた。スタート神父は、ディッキーのうぬぼれをくすぐった。他のジェイゴウの少年たちよりも、お前はもっとましなことが出来るではないか。お前なら、賃金を定期的に稼ぐこともできるし、もっと快適な暮らしをおくって、いい食べ物をたべ、いい服を着て、警察におびえることもなければ、自分がしたことを恥じる必要もない生活をおくることができるではないか。他の者には出来ないが、お前なら出来るだろう。他の者たちは、あまり賢くはない。それにもかかわらず自分たちのことを賢いとか、経験豊富とか言っているのだ。「だが」スタート神父はつづけた。「あの者たちのうち誰ひとりとして、私をだませた者がいるだろうか?」そしてディッキーには、誰もそのような者がいないということがわかっていた。「大半の者が仕事をしない」神父の話はつづいた。「仕事をしてみようとする勇気もなければ、仕事をなしとげる頭もないせいだよ。もし、そういうものを持ち合わせていたら、ジェイゴウでみじめな生活を送ったりしないで、まともな仕事をして快適に暮らしているはずだ」

 

 ディッキーは、イグサの袋づくりのような仕事にすでに熱心にとりかかっていたので、自分は仕事をするほうの人間だという優越感にひたりながら、耳をかたむけた。そうだ、もしその気になれば、自分は仕事につくこともできるだろうし、ジェイゴウの友達から羨望の眼差しをむけられながら、生き方をかえることができるだろう。でも、どうすればいいのだろう。ジェイゴウで生活している少年を雇う人間なんかいない。それは周知の事実だ。ここに住所があるということは、このあたり数マイル四方では、滅茶苦茶な人間の証となっていた。

 ベーツの奥さんが荷物をとりにやってくると同時に、ディッキーは喜びにふるえながら駆け出し、母親とエムにむかって、スタート神父の部屋で紅茶をのむことになったと告げた。

Father Sturt chatted with Dicky till the boy could scarce plait for very pride. Would not Dicky like to work regularly every day, asked Father Sturt, and earn wages? Dicky could see no graceful answer but the affirmative; and in sober earnest he thought he would. Father Sturt took hold of Dicky’s vanity. Was he not capable of something better than other Jago boys? Why should he not earn regular wages, and live comfortably, well fed and clothed, with no fear of the police, and no shame for what he did? He might do it, when others could not. They were not clever enough. They called themselves ‘clever’ and ‘wide;’ ‘but,’ said Father Sturt, ‘is there one of them that can deceive me?’ And Dicky knew there was not one. Most did no work, the vicar’s argument went on, because they had neither the pluck to try nor the intelligence to accomplish. Else why did they live the wretched Jago life instead of take the pleasanter time of the decent labourer?

Dicky, already zealous at work as exampled in rush bag-making, listened with wistful pride. Yes, if he could, he would work and take his place over the envious heads of his Jago friends. But how? Nobody would employ a boy living in the Jago. That was notorious. The address was a topsy-turvy testimonial for miles round.

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