アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」9章85回

彼は体こそ大きいものの、包容力があって思いやりのある男だった。声の調子や、大きくて、果肉のように柔らかな手の感触が告げているのは、この世の悲しみや罪に対する尽きることのない優しさだった。まだ若くて小さな店を一軒持っているだけで店員もいなかった頃でも、彼は糖蜜をはかるときも親切心をたっぷり溶かしこんだので、糖蜜はギレアデの香油のようにみえ、その値段のわりにはたっぷりとしていて、贈り物のように思えたのだった。取引をするときには慈善について切々と説くので、相手の男も自分の利己的なところが恥ずかしくなって、まるで貧しい者が取引をしているような気持ちにかられた。その声は大抵のどを鳴らしているような声で、しわがれていたが、相手をなだめるように話し、思いやりにあふれた声が相手を動かそうとしていた。そこで幸せになる者は誰もいないのだが、ダンキン氏と話していると、運命があまりに厳しいので、たっぷり同情してもいいのではないかと思えるのであった。ダンキン氏は遠慮なく富をまきちらかした。だが、こうしたところで、富が別にもたらされてくることはなかった。

 

He was a large man, of vast sympathy. The tone of his voice, the grasp of his wide, pulpy hand, told of infinite tenderness toward the sorrows and sins of the world. Even in the early days when he had but one shop (a little one) and no shop-man, he would weigh out a pound of treacle with so melting a benignity that the treacle seemed balm of Gilead, and a bounteous gift at the price. He would drive a bargain in a voice of yearning beneficence that left the other party ashamed of his own self-seeking, as well as something the poorer by the deal. It was a voice wherein a purr had a large part—a purr that was hoarse yet soothing, and eloquent of compassion; so that no man was so happy but a talk with Mr. Dunkin would persuade him that the lot was hard indeed, that entitled him to such a wealth of sympathy. It was a wealth that Mr. Dunkin squandered with no restraint but this, that it carried no other sort of wealth with it.

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