アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」9章91回

だが、塗料は暇をつぶすためのものではなく、その社会で生活する手段のひとつであった。そのおかげで高度な経済社会に匹敵する便宜さが彼らの社会にあたえられた。そこでは、「金」と「信用」につうじる機能がすべて「塗料」であらわされていた。ハーバーレーンやその周囲では、こうして生活が永久的につづいていき、だれもがあらゆる人から塗料をいくらか借りて、やがて他のひとから塗料で支払いをうけた。このようにして複雑な交換の制度が広まり、その制度では口頭で請求書をきったり、小切手で支払ったりするのだった。次にあげるのは、その単純な例である。

「やあ、ビル。塗料を一缶、都合つかないかね?」

「ちょうどよかった。今夜、入ってくる予定だ」

「わかった。でも、おれのところではなくて、ジョージのところに持って行ってくれ。知っているだろう?ジムに塗料を少し借りているんだが、ジムはジョーに少し借りている。ジョーはジョージに少し借りている。そういうわけで、こうすれば万事うまくいく。忘れないでくれ」

 

But paint was something more than a recreation and an instrument of social amenity. It furnished the colony with an equivalent of high finance, wherein all the operations proper to Money and Credit (as spelt with capital initials) were reflected in Paint. For it was a permanent condition of life in Harbour Lane and thereabouts, that everybody owed everybody else some amount of Paint, and was owed Paint, in his turn, by others. So that a complicated system of exchange prevailed, in which verbal bills and cheques were drawn. As thus, to make a simple case:

“‘Ullo, Bill, what about at pot o’ paint?”

“Well, I was goin’ to bring it round to-night.”

“All right. But don’t bring it to me—take it to George. Ye see, I owe Jim a bit o’ paint, an’ ‘e owes Joe a bit, an’ Joe owes George a bit. So that ’11 make it right all round. Don’t forget!”

 

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