NYTコラム「アメリカの世代間戦争」

The Generation Gap Is Back – NYTimes.com.

2012年6月22日

パルチザン的な国では組織活動が両極化してしまい、いつも意見が衝突している。例えば信仰に厚い者と世俗にまみれた者、99パーセントの多数派と1パーセントの少数派、共産党の赤いアメリカと警察官の青いアメリカというように。

しかし、こんな境界線をただ一本ひくだけでは、実際のところ、なんの注目もあつめない。それは若い層と年輩者たちを隔てる境界線のことである。

65歳でも、50歳でも、40歳でもいいから境界線を引いてみよう。境界線をどこにひこうと、結局、境界線をはさんで向かい合う人たちは、経済的にも、政治的にも違って見えるものだ。ジェネレーション・ギャップとは、1960年代のように、ポップ・カルチャーの産物ではないかもしれない。しかし世代間格差は1960年から見てみると、どんな時よりも大きくなりつつある。

1980年代から90年代にかけては、若い層も、年輩者たちも、大方が同じようなやり方で投票した。つまり若い層だろうと、年輩者たちだろうと、それぞれの多数派が大統領選のたびに勝者となったのだ。そのうち2004年頃から、年輩の有権者が右傾化するようになり、一方で若い有権者が左につくようになった。今年、ミット・ロムニーが65歳以上の層で圧倒的勝利をしめ、オバマ大統領は40歳以下で同様に勝利するだろうと、世論調査は示している。

政党に関係なく、この二つの層は国の前途に関する、多くの重要な質問について異なる見方をしている。若い層は同性間の結婚や学校基金に好意的であるだけでない。注目すべきことだが、若い層は信仰心がなく、移民の受け入れについては積極的で、社会保障の削除や軍事費の削除については敵意を抱かず、国の将来に楽観的である。

若者の楽観主義は、背景にある経済問題に直面していく。年輩のアメリカ人はこのところ、著しく目減りした年金をおそれながら、見るからに多くのことを心配してきた。しかし最近10年間の経済は不活発であり、並にしか発展せず、沈滞著しいものであり、いまだに若者に犠牲を強いている。若い層は職業人生を確かなものにすることなく、雇用されようと苦闘して職にしがみつくのである。

65歳以上が世帯主になっている家族と35歳以下が世帯主になっている家族では、財産の差も広がりつつある。1989年に連邦準備局がしっかりしたデータをとるようになって以来、どの年と比べても財産の挌差はもっとも大きくなっている。持ち家に関する格差も、国勢調査が1982年に開始されて以来、一番大きい。収入の格差も大きくなっている。25歳から34歳を世帯主とする家族の収入をインフレで調整すると、最近10年間で11パーセント減少している。一方55歳から64歳にかけての年齢集団は本質的に変わっていない。

こうした経済的、政治的な傾向をまとめた討論があるなら、実際のところ、若い層は年輩層に負けている。別な話題に関してウォーレン・ビュッフェ、81歳が冗談で言ったことだが、この国には確かに階級間の戦いが存在する。そして彼の階級はその戦いに勝っているのだと。世代間の戦いについても、ウォーレン・ビュッフェは同様に勝利宣言をすることができるだろう。

若い世代は、国民経済においても苦戦している。若い世代には政治的な力がないし、足下の経済を守るたっぷりとした安全網がない。年輩のアメリカ人は高い割合で投票するし、若い世代よりも組織化がすすんでいる。でも退職していないアメリカ人のための組織はないのだ。「ペル奨学金は」と政治学者ケイ・レマン・シュルツマンは指摘する。「アメリカ経済に送電する第三軌条と呼ばれることはなかった。」

とりわけ、連邦政府の給付金の50パーセント以上が、人口のうち13パーセントを占める65歳以上に流れていく。こうした給付金の出所は社会保障費からある程度来ている。多くの人は職業人生をとおして、この社会保障費を支払う。しかし、かなりの金額がメディケアに流れていく。一般的に思われていることとは逆に、ほとんどのアメリカ人は、支払い給与税(訳注1)からメディケア予算を支払うことを望んでいない。メディケアは国家予算の一番大きな赤字になりつつあることに加え、若者が年輩者を負担していくことになるプログラムだからだ。(訳注1 支払い給与税・・・従業員に支払われた賃金・給与総額をベースとして雇用主に対して課される税、アメリカでは社会保障のための目的税)
 
しかしながら教育予算に関しては、世論調査によれば若い層がもっとも削減すべきでないと考える分野であるにもかかわらず、大幅に削減されている。若い層は地球温暖化についても、政府に行動をおこすように望んでいるが、連邦議会は動きそうな気配がない。同性間の結婚についても、世論は若い層の考え方に動いているが、この事案について投票をおこなった31の州では、投票結果は同性間の結婚に反対するものとなった。

長期的な展望にたてば、明らかに若い層は確かに優位にたつ。若い層は消えてなくなることはないからだ。アメリカ政治の将来に関する大きな懸念の一つに、今日の20代から30代が現在抱いている考えをいつまで維持し、高齢化と保守化について常套句のようにはならないでいることができるかということがある。つい最近、1970年代から1990年代にかけての大統領選の結果がはっきり示したように、アメリカ人は年をとったからといって保守的にはならない。

今日の若い層は自由主義とまでは言えないものの、個人名義預金口座から社会保障を支払うことを好み、ネット上のプライバシーを守るために政府の行動を制限する。たしかに若い層は左傾化している。

その理由は正確には誰にも説明できない。だが懸念事項もある。多様性に囲まれて育った若い層は、社会的な感覚が自由であり、無意識のうちに自由な行動をとる。若い層の多くは、(非常に不評であった)ジョージ・W・ブッシュ大統領か(非常に好評であった)ビル・クリントン大統領の時代に成年に達した。ポー・リサーチ・センターの世論調査によれば、一つの世代をつくりあげることになる大統領は、良い方向にだろうと、悪い方向にだろうと長い影をおとすことになる。経済の沈滞に打ち砕かれたせいで、若い有権者たちは政府が経済に重要な役割を果たすように望んでいる。

こうした若い有権者の態度は共和党に試練をつきつけている。共和党は大きな勢力を保っているにもかかわらずラテンアメリカの有権者への挑発でよく知られ、大きな勢力を保つ共和党政権へ試練をつきつけている。「社会的に自由であり、政府に対してどんどん行動する若い世代が、我々に加わったのだ」世代にまたがって広く調査をおこなったポー・リサーチ・センターの所長アンドルー・コーツは言う。「若い世代はまったく異質である」

2004年にブッシュが再選で勝利してすぐ、年齢格差がちょうど広がったときのことである。キャンペーン策略活動のチーフ、マチュー・ドウドは、ブッシュの書記官にメモを書き、共和党の多数派が新しく広がりつつあると決めつけないように忠告した。マチューがカール・ルーヴや他のものに伝えたところによれば、投票所出口調査では、若い有権者はかなり民主党に投票しているらしい。こうした有権者は、やがて長い期間にわたって選挙民になるのだ。

「若い層は、共和党の考えと自分たちの考えが一致しているとは考えていない」。年輩の有権者は、若い人たちの移民政策への容認、ゲイへの親近感、民主党政府への関わりなどを見て、自分たちとは異質なものを感じていると、先週マチューは述べた。「こうした若い有権者が38歳になった頃、以前はゲイの結婚に賛成していたけど、今は反対だとは言わないだろう」

今までどおり、今日の若者が生涯にわたって民主党であると仮定するのは間違っているだろう。1960年代の子供たちの多くは、結局成人してロナルド・レーガンの支持者になった。政治に関する景色は、時が経つにつれて移り変わっていく。弱体化した経済に苛立ち、適切さを欠いた形で年輩者にばかり予算をくむ政府に不信をつのらせ、若い層はワシントンの政府に税金を納めるのを渋るようになることもある。共和党はそのうちもっとリベラル色の強い政党になるだろうし、若い層の社会の見方も同じようにリベラルなものになるだろう。

明らかなことは、市場の助言役たるグルはいつまでも右であるということだ。今日の若い人は本当に異質である。若い人の見方は、荒々しくて、今までとは異なるアメリカなのである。これは厳然たる事実である。若い人は、人生を昔よりは良いものと見なしている。しかし彼らは70年代の経済のスランプの産物であり、どんな些細な助けでも欲しがるだろう。若い人たちは、この国が将来についてもっと、とりわけ教育や気候について関心をはらってくれることを望んでいる。若いひとたちは無論、未来と向かい合って生きていかなくてはいけないのだから。

ディビッド・レオンハードはニューヨークタイムズのワシントン局のチーフである。(LadyDADA訳・Riverチェック)

 

 

 

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