アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」23章199回

 ナンは店にいたが、最初から二人のやりとりを聞いていて震えあがった。あいだに割って入りたいという衝動にかられたが、なんとか抑えた。そんなことをすれば、ベッシーの立場がさらに悪くなることがわかっていたからだ。だが、そうするのも息がつまる思いであった。

 その最中に、ジョニーが通りから、突然、家のなかに口笛をふきながら入ってきた。「どうしたんだい、かあさん」彼はいった。「何かあったの? 具合でも悪いの? 様子が変だよ、どうしたの?」

「べつにーなんでもないよ、ジョニー。中にはいらないで。わたしが行くから。そこにいて」

 だがそのとき、叫び声と倒れる音がした。ジョニーは荒々しく居間の扉をあけると、仰天して立ちつくした。

 バトスンが、少女を炉格子に押しつけていた。「外に行って食い扶持を稼ぐんだ。怠け者の雌犬め。ここから出て行け」

 数秒、ジョニーはその光景をみつめた。それからバトスンに飛びかかり、右のこぶしをふりかざして、相手を殴りつけると、押し倒した。足元に松葉杖があったので、その男はつまづいてしまい、床に尻もちをつくと、呆気にとられて茫然とした。ジョニーは火かき棒をつかみ、バトスンの頭上でふりかざした。

「うごくな」彼は叫んだが、怒りで顔は蒼白になっていた。「立ち上がるな。もし立ち上がれば頭を殴るぞ」

 バトスンさんは頭を守ろうと腕でおおったが、関節に一撃をうけ、そのせいで片腕の感覚が麻痺してしまった。

 

Nan, in the shop, heard from the beginning, and trembled. Her impulse to interfere she checked as she might, for she well knew that would worsen Bessy’s plight; but it was choking hard.

In the midst Johnny burst in from the street, whistling. “Why, mother,” he said, “what’s up? Ill? You look—what’s that?”

“No—nothing, Johnny. Don’t go in. I’ll go. Stay—”

But there was a cry and a noise of falling. Johnny flung open the parlour door and stood aghast.

…Butson pushed the girl forward. “Go an’ earn yer livin’, y’ idle slut! Get out o’ this!”

For a second Johnny stared. Then he reached Butson at a spring and knocked him backward with a swing of his right fist. The crutch lay behind the man’s heels and tripped him, so that he sat backward on the floor, mightily astonished. Johnny snatched the poker and waved it close about Butson’s head.

“Don’t you move!” he cried, white with passion. “Don’t you try to get up, or I’ll beat your head in!”

Mr. Butson raised his arm to save his skull, but caught a blow across the bone that sent it numb to his side.

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