アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」24章215回

 そこで彼は雄々しくやりとげたが、不安にふるえることもなく、落ち着くことができると判断したときにやりとげた。最初に告げられたのがカリドールだったので、ジョニーは元気をだした。まだ全般的に自分のダンスに自信がなかったからだ。それでもカリドールの形を知っていたのは、ほとんどの少年がユークリッドを学ぶように覚えているものだからだ。彼が両手をさしだした穏やかな若い男性店員は、思いがけないことに踊りの中心になるように言われた。そして二分もしないうちに、ジョニーの横で、ノラ・サンスンとサイド・カップルになっていた。その二人組にジョニーの記憶は乱されたが、彼らが横にいたのは幸運であった。もしそうでなければ、暴動がおきていただろう。ジョニーの相手はダンスについて殆ど何も知らなかったが、のみこみの早い娘だった。ジョニーは初心者ではあったが、不安定ながら音楽について知識があるせいで、誇らしいことにも優位にたっていた。こうして時は楽しく過ぎていき、娘の目は輝いていき、やがてその顔は絶えず笑みをうかべるようになった。娘の生活から、笑い楽しむということが奪われていたが、ここには娘たちが好む楽しい雰囲気にみちあふれていた

ダンスを四曲か五曲踊ったところで終わりになった。学校が、十時になると閉まるからだ。ダンスを踊るとき、すべての曲をノラ・サンソンとだけ踊るのは不可能なことで、学校で醜聞になることであった。だがジョニーはふたりで、腰かけて休むとことに成功し、またいつか此処にきて一緒に踊るという約束を、彼女からとりつけた。さらに彼女といっしょに二街区歩いて家にもどり、栄光の雲でおおわれた道を歩いた。さらにその先にある彼の知らない世界まで行きたかった。だが、そこで彼は立ち去ることにしたが、それでも十分心は満ちたりていた。

 うつくしい。実にうつくしいと思いながら、月光に照らされた貧相な小道を歩いて、ジョニーは家まで戻った。空気もかぐわしかった。この世はすばらしく、親切で、そうした世をみていると、瓶を上等のシャンペンでみたす人のような気持ちになった。途中で誰かに出会えば、ジョニーはその両手を握っていただろう。もしバトスンさんに会っても、その手をとったことだろう。だが、そうした機会を提供してくれる者は誰もなく、焼き栗売りに高い塀の横で会っただけだった。焼き栗売りは、ジョニーがこんばんはと声をかけても唸り声をあげただけだった。ノラ・サンソンは、聖歌集にでてくるような美人ではなかった。彼女の髪は金髪でもなければ、黒いわけでもなかった。ほかの人々と同じように、ありふれた茶色の髪で、その目も灰色にすぎなかった。それでもジョニーは夢をみていた。

 

Four or five dances were all there were, for the place shut at ten. To dance them all with Nora Sansom were impossible and scandalous, for everybody was very “particular” at the Institute. But Johnny went as far as two and a “sit out,” and extracted a half-promise that she would come and dance some other time. More, he walked two streets of the way home with her, and the way was paved with clouds of glory. Why he might go no farther he could not guess, but there he was dismissed, quite unmistakably, though pleasantly enough.

Fair, very fair were the poor little streets in the moonlight as Johnny walked home, and very sweet the air. It was a good world, a kind world, a world as one may see it who has emptied a bottle of good champagne. Johnny would have shaken hands with anybody on the way—probably even with Butson if he had met him; but nobody made the offer, and even the baked-chestnut man—he was still there, by the high wall—growled merely when Johnny gave him good night. And so Johnny went to dreams of gentle grey eyes in a dimpled face with brown hair about it. For few of the song-book beauties were Nora Sansom’s. Her hair was neither golden nor black, but simple brown like the hair of most other people, and her eyes were mere grey; yet Johnny dreamed.


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