アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」32章255回

「顔をあわす程度だったけど。言うまでもないけど、話しかけたりはしていない。おれは無口だからね。そのときからバトスンを知っていた。あちこちの店で見かけたよ。あいつは独身男性でとおっていた。ライムの下宿には、長くはいなかった。この地区にきたあとは、彼女も見かけることはなかった。もちろん、あの男はしょっちゅう見かけたけど。彼がお母さんと結婚したと聞いたときには、最初のうちは少し驚いたよ。でも、そのときはこう思ったんだ。最初の奥さんが死んだ、死んだにちがいないと。だが、それからしばらくして、彼がどれほどひどいかお前から聞かされたときに、彼のいくじのない性格について考えはじめた。彼が怠けて暮らしているのは知っていたけれど、お母さんにそんなに辛くあたっているとは思わなかった。だから、お前が彼を追い出したいと話していたときに考えたんだ。それだけのことをする悪い男なら、他にも悪いことをしているだろうと。おそらく、最初の奥さんは生きているにちがいない。もしそうだとしたら、これはいい機会じゃないか。とにかく賭けにでることにして、一日か二日、最初の奥さんを捜してみた。ついに見つけた結果が、この大騒ぎだ。俺のせいだよ。自分を斧で殺してしまいたい」

「ああ、たしかにずいぶんな騒ぎだ」ジョニーは、憂鬱そうに言った。「たぶん店の商売は駄目になってしまうだろうし、母さんも半分死んでいるような状態だ。でも、こうした騒ぎは避けることはできなかったと思うよ」

 

“On’y by sight, an’ not to say to speak to, me bein’ a quiet sort. I knew Butson since—in the shops; most took ‘im for a bachelor. Well, I wasn’t at Lime’us very long; I came away to this part an’ see no more of ‘er—though o’ course I see ‘im, often. When you told me ‘e’d married your mother it took me aback a bit at first. But then, thinks I, I expect the first one’s dead—must be. But after that, the other day, when you told me what a right down bad ‘un ‘e was, I begun to think wuss of ‘im. I knew ‘e’d bin livin’ idle, but I didn’t guess ‘e treated ‘er so bad. An’ when you talked o’ wantin’ to get rid of ‘im, I got a notion. If ‘e’s bad enough for what ‘e’s done, thinks I, ‘e’s bad enough for anythink. P’raps ‘is fust wife’s alive after all, an’ if she is, why the job’s done! Anyway, I puts it, I’ll risk a day or two auf on it. An’ I did, an’ ‘ere’s a nice old bloomin’ mess I made! Oh, I ought to be poleaxed!”

“Well of course there’s been a row,” Johnny said gloomily, “an’ I expect it’ll knock trade to pieces here, an’ half kill mother. But you couldn’t very well help a row in a thing like this.”

さりはま の紹介

何かあればsarihama★hotmail.co.jpまでご連絡ください。★は@に変えてください。更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: アーサー・モリスン, ロンドン・タウンへ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.