アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」36章266回

こうして日々が過ぎ去り、月日がたつうちに、ナンの悲しみは心から消え去り、そのつらい思い出も、彼女の記憶から失われていった。新たな日々が、あたらしい平和をもたらした。おそらく新たな日々は、退屈ですらあった。ここは退屈な場所であり、通りは立体感のない壁でできていて、汚れ、心配そうな通行人が通る場所であった。でも外が退屈なこと位、たいしたことではなかった。やらなくてはいけない大変な仕事が彼女にはたくさんあるし、自慢の息子もいるのだから。

ノラにとって悲しいことに、だれにも相談することができなかった。彼女がよく知っている病院のベッドのことも、その枕にもたれかかる灰色の顔が弱っていく有様も、まわりの様子がわからなくなっていく様子のことも。そしてついに涙をながしながら、粘土色の墓地にたつ日がおとずれた。それは孤独な日であったが、不思議なことに、退屈なくらいに心は平穏であった。

だが、こうした日々も、他の日々と同様に過ぎていき、年月が過ぎた。通りは冬になればぬかるみ、夏になれば埃っぽくなった。煤けたゼラニウムが窓の下枠で花を頑張って咲かせ、やがて枯れていった。何マイルも離れたところで、森は新緑から、茶色く紅葉の時期をむかえ、やがて白銀の世界へと変化していった。新緑の時期がくると、森を追われた一家は、年に一度だが、森をながめに行くのであった。だが、その姿は今でも、ベッシーの夢のなかでひろがっていた。

二年が過ぎ去り、ジョニーはあと五ヶ月で二十一歳となるが、そのときがくれば彼の見習い期間は終わりになるのだ。見習い期間が終わりに近づいた八月のある日、彼は森をひとりで歩いていた。来年は、森には遠足にいくわけにはいかないだろう。その頃には、運にめぐまれていたなら、彼は海上にいるのだから。会社が推薦状を書くと約束してくれたので、その推薦状があれば、彼は四等機関士として、航海に一年間でることになるだろう。

 

SO with the days and the months Nan’s sorrows fell from her, and their harder shapes were lost in her remembrance; and the new days brought a new peace—perhaps even a new dulness. For this was a dull place, this street of flat walls, and grime, and anxious passengers. But what mattered mere dulness of externals when she had hard work to do, and a son to take pride in?

For Nora’s sorrows, who shall speak? There was a hospital bed that she knew well, a pillow whereon a slaty face wasted and grew blank of meaning. And in the end there was a day of driving wet in a clayey cemetery, a day of loneliness, and wonder, and dull calm.

But that day went with the others, and that year went. The streets grew sloppy with winter, dusty with summer: and smoky geraniums struggled into bloom on window-sills, and died off. Miles away the Forest gowned itself anew in green, in brown and in white; and in green the exiles saw it, once a year: but all its dresses were spread for Bessy still, in her dreams.

Two years were gone, and Johnny was within five months of twenty-one, and the end of his apprenticeship, when on a brave August day he walked in the Forest alone. There would be no Forest excursion for him next year, for then, with good fortune, he would be upon the seas. For the firm had promised him the recommendation that would give him a year’s voyaging as fourth engineer.

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