チェスタトン「マンアライヴ」一部一章第23回

帽子は最初、しぼんで手持ち無沙汰な様子で、気怠さをただよわせながら、陽光ふりそそぐ芝生の上にあった。だが風があらたに吹きつけると、帽子はパ・ド・カトルの四人舞踏さながらの、無茶な悪戯におどらされ、庭を転がりはじめた。その変な男も帽子のあとを追いかけはじめたが、それはカンガルーの飛び跳ねる姿のようでもあり、張りつめた会話が爆発しているかのようでもあったが、その会話の筋道をたどることは、いつも容易いという訳にはいかなかった。「正々堂々と戦え。正々堂々と戦え…王様のスポーツなんだから…王様の冠を追いかけろ…苦痛をあたえるな…山から北風(トラモンスターナ)が吹いてきた…枢機卿が赤い帽子を追いかける…昔の英国の狩猟は…ブランバー谷から帽子をかぶってはじめた…帽子をかぶって海まで追い詰めた…猟犬をめった切りにした…つかまえた!」         

The hat had seemed at first to droop and dawdle as in ostentatious langour on the sunny lawn; but the wind again freshening and rising, it went dancing down the garden with the devilry of a pas de quatre. The eccentric went bounding after it with kangaroo leaps and bursts of breathless speech, of which it was not always easy to pick up the thread: “Fair play, fair play… sport of kings… chase their crowns… quite humane… tramontana… cardinals chase red hats… old English hunting… started a hat in Bramber Combe… hat at bay… mangled hounds… Got him!”

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