チェスタトン「マンアライヴ」一部三章第82回

「なんだって」マイケルは問い返したが、やや憂鬱そうな口調であった。彼の長く、日に焼けた頭部は、日没を背にして黒々としていた。偶然なのか、そのときの気分なのか、彼の表情がどこか孤独で、よそよそしいのは、やや行き過ぎた庭園での懇親会にいるせいであった。

「スミスさんを精神病院に入院させた方がいいと言っただけよ」そのレディは繰り返した。

 痩せた顔は長く、いっそう長くなっていくように見えた。ムーンは確かにあざ笑っていた。「いや」彼はいった。「まったく必要ないと思う」

「なんですって」ロザムンドは鋭く問い返した。

「もう、入院しているじゃないか」マイケル・ムーンは答えたが、その声には静かだが不快なものがあった。

「おや、気づいていなかったのか?」

「なにを?」その娘はさけんだのだが、その声はとぎれた。アイルランド人の顔も、声も、実に薄気味悪いものだった。黒っぽいその姿も、謎めいた言い方も、陽の光のなかで見てみると、天国にいる悪魔のようであった。

「説明が足りなかったようだ、すまない」彼は言葉をつづけたが、不快にさせる卑下がひそんだ口調だった。「そんなことは少しも話題にしていないけど。でも全員、わかっていると思っていたんだ」

 

“I beg your pardon,” inquired Michael, rather sombrely; his long, swarthy head was dark against the sunset, and, either by accident or mood, he had the look of something isolated and even hostile amid the social extravagance of the garden.

“I only said Mr. Smith ought to go to an asylum,” repeated the lady.

The lean face seemed to grow longer and longer, for Moon was unmistakably sneering. “No,” he said; “I don’t think it’s at all necessary.”

“What do you mean?” asked Rosamund quickly. “Why not?”

“Because he is in one now,” answered Michael Moon, in a quiet but ugly voice.
“Why, didn’t you know?”

“What?” cried the girl, and there was a break in her voice; for the Irishman’s face and voice were really almost creepy. With his dark figure and dark sayings in all that sunshine he looked like the devil in paradise.

“I’m sorry,” he continued, with a sort of harsh humility. “Of course we don’t talk about it much… but I thought we all really knew.”

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