チェスタトン「マンアライヴ」一部三章第84回

「あなたには悪い習慣があるとは聞いていたけれど」

「習慣とはすべて、悪いものだ」マイケルはひどく冷静に言った。「狂気が生じるのは、狂気が生れるからじゃない。屈して、落ち着くことによって狂気は生じるんだ。汚くて、小さな、あることを考えて堂々巡りをしている輪のなかで狂気は生じるんだ。飼いならされることによって狂気は生じる。君の場合、お金に関して狂っている。君が遺産相続人というせいで」

「嘘よ」ロザムンドは怒って叫んだ。「私がお金に汚かったことなんて一度もないわ」

「君の方がもっとおかしかった」マイケルは声をおとして、でも荒々しく言った。「他の連中の方がおかしいと君は考えたじゃないか。接近する男は、すべて財産めあてだと考えた。君は羽目をはずそうともしなかったしけれど、正気であろうともしなかった。そして今、君はおかしいし、僕もおかしいというわけだ。いい気味だ」

「なんて嫌なひと」ロザムンドは言ったが、その顔は蒼白だった。「それは真実かしら?」

 

“I’ve heard you had some bad habits—”

“All habits are bad habits,” said Michael, with deadly calm.
“Madness does not come by breaking out, but by giving in; by settling down
in some dirty, little, self-repeating circle of ideas; by being tamed.
YOU went mad about money, because you’re an heiress.”

“It’s a lie,” cried Rosamund furiously. “I never was mean about money.”

“You were worse,” said Michael, in a low voice and yet violently. “You thought that other people were. You thought every man who came near you must be a fortune-hunter; you would not let yourself go and be sane; and now you’re mad and I’m mad, and serve us right.”

“You brute!” said Rosamund, quite white. “And is this true?”

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: チェスタトンの部屋, マンアライヴ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.