チェスタトン「マンアライヴ」一部四章第94回

彼がむけた眼の大きいこと、青いこと。彼はひき込むような眼差しで、彼女の顔を見つめた。「僕の名前はムーンなんだろうか?」彼は訊ねた。「君の名前はハントなんだろうか? 誓ってもいいけど、そうした名前は風変りで、馴染みのないものに思えるよ。アメリカ・インディアンの名前のようなものだ。まるで君の名前が「泳ぐ」で、僕の名前が「日が昇る」みたいなもんだ。でも、いいかい。僕たちの本当の名前は「夫」と「妻」なんだよ。これまでも眠っているときは、そうだったんだよ」

「無駄なお話はやめて」ロザムンドは、両目に涙をうかべて言った。「あともどりしても仕方ないわ」

「とんでもない、僕はどこにでも行くことができるんだ」マイケルは言った。「しかも、君を肩にかついで行くこともできる」

「まあ、やめて。マイケル。ほんとうに。おしゃべりはやめて、考えてみるのよ」娘は真剣な調子でさけんだ。「あなたは私の足をすくって、身も、心も夢中にさせてしまうかもしれない。それでも、あえて言うけれど、結局は苦く、ひどい顛末になるのかもしれないのよ。恋の軽はずみにながされるということは、スミスさんを見ればわかるけど、とても、とても女心をゆさぶるわ。その事実は否定しないけど。あなたが言う通り、今夜は真実を話すつもりですから。メアリーも女心をゆさぶられた。私もゆさぶられた、マイケル。でも冷ややかな事実が残るのよ。軽率に結婚すれば、ふしあわせで絶望にみちた時が長く続くと。あなたには、お酒やら他にもよくない癖があるわ。それに私だって、いつまでも可愛いわけじゃない」

 

He kept two big blue magnetic eyes fixed on her face. “Is my name Moon?” he asked. “Is your name Hunt? On my honour, they sound to me as quaint and as distant as Red Indian names. It’s as if your name was `Swim’ and my name was `Sunrise.’ But our real names are Husband and Wife, as they were when we fell asleep.”

“It is no good,” said Rosamund, with real tears in her eyes; “one can never go back.”

“I can go where I damn please,” said Michael, “and I can carry you on my shoulder.”

“But really, Michael, really, you must stop and think!” cried the girl earnestly. “You could carry me off my feet, I dare say, soul and body, but it may be bitter bad business for all that. These things done in that romantic rush, like Mr. Smith’s, they— they do attract women, I don’t deny it. As you say, we’re all telling the truth to-night. They’ve attracted poor Mary, for one. They attract me, Michael. But the cold fact remains: imprudent marriages do lead to long unhappiness and disappointment— you’ve got used to your drinks and things—I shan’t be pretty much longer—”

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