チェスタトン「マンアライヴ」一部四章第101回

 彼らは炎のごとく赤く染まっている草地に数歩ふみだしたが、人影に気がついた。ロザムンド・ハントと風変わりなムーン氏だ。最後にふたりを見かけたときは、どちらもお互いに関心はなく、暗澹たる気分であったはずなのに、今ではいっしょに草地にたっていた。彼らはいつもの様子でたっていたが、本の中の人物のようにも見えた。

「まあ」ダイアナは声をあげた。「空気がなんてかぐわしいのかしら」

「わかるわ」ロザムンドはここぞとばかりに声をはりあげたが、その声があまりに自信に満ちているものだから、不平を言っているかのように響いた。「まるで私がすすめられたものと同じよ。ぞっとするほど嫌な感じがしたわ。おまけにしゅわしゅわ泡がはじけているの。そのせいで、私、幸せな気分になってしまって」

「まあ、あれ以外の何ものでもないわね」ダイアナは息を深く吸い込みながら答えた。

「どうかしら。とても冷たいのに、炎のように感じるの」

「はじけているというのは、フリート・ストリートで使う新聞記事の用語だよ」ムーンは言った。「はじけているというのは-とくに頭の状態について言うときに使うんだ」

 

When they were gone a few feet across that fiery grass they realized that they were not alone. Rosamund Hunt and the eccentric Mr. Moon, both of whom they had last seen in the blackest temper of detachment, were standing together on the lawn. They were standing in quite an ordinary manner, and yet they looked somehow like people in a book.

“Oh,” said Diana, “what lovely air!”

“I know,” called out Rosamund, with a pleasure so positive that it rang out like a complaint. “It’s just like that horrid, beastly fizzy stuff they gave me that made me feel happy.”

“Oh, it isn’t like anything but itself!” answered Diana, breathing deeply.
“Why, it’s all cold, and yet it feels like fire.”

“Balmy is the word we use in Fleet Street,” said Mr. Moon. “Balmy—especially on the crumpet.”

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