チェスタトン「マンアライヴ」一部五章第158回

自分を追いかけてごらんという誘いに娘達がのらなかったので、彼は立ち去ったが、興奮にかられているせいで、ふらりふらりと踊っているかのようだった。庭を一周してから、彼がふたたび姿をあらわしたとき、息はきれていたが、それでも晴れやかな顔をしていた。相手がいかなる人物かということにムーンが気づいたのは、その人物、モーゼス・グールドと話していた人々が怒っていたにせよ、それほど本気になっていない様子をみたときだった。ガラス扉は、モーゼス・グールドのすぐそばで開け放たれていた。この陽気な愚か者の足がそちらへむかうと、その場にいた人々も同じ方向にむかい、異議を申し立てることなく騒々しい一行と化した。ダイアナ・デュークだけが厳しさを失わず、この数時間のあいだ、その猛々しくも女らしい唇であたためつづけた言葉を何やら呟いた。だが悲劇の気配に、さすがにその言葉は思いやりがないだろうと彼女は隠した。「今日のところ」彼女はつっけんどんに言った。「馬車は追い返せばいいわね」

「そうね、イノセントは鞄をおろして持っていったと思うから」メアリーは微笑みをうかべて言った。

「馬車の御者が私たちのために鞄をおろしてくれたのかもしれないけど」

 

The girls betraying no temptation to chase him, he went away in a sort of waddling dance of pure excitement; and had made a circuit of the garden before he reappeared, breathless but still beaming. Moon had known his man when he realized that no people presented to Moses Gould could be quite serious, even if they were quite furious. The glass doors stood open on the side nearest to Mr. Moses Gould; and as the feet of that festive idiot were evidently turned in the same direction, everybody else went that way with the unanimity of some uproarious procession. Only Diana Duke retained enough rigidity to say the thing that had been boiling at her fierce feminine lips for the last few hours. Under the shadow of tragedy she had kept it back as unsympathetic. “In that case,” she said sharply, “these cabs can be sent away.”

“Well, Innocent must have his bag, you know,” said Mary with a smile.
“I dare say the cabman would get it down for us.”

さりはま の紹介

何かあればsarihama★hotmail.co.jpまでご連絡ください。★は@に変えてください。更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: チェスタトンの部屋, マンアライヴ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.