チェスタトン「マンアライヴ」一部五章第168回

「おや、なんだって」イングルウッドは声をあげたが、その声からユーモアは消え失せていた。「なにかに気がついたかだって?」

「彼のことだけど、こんなことに気がついたことがあるか?」ムーンは、あいかわらず頑固に訊ねた。「彼はいろんなことをやっているのに、ほんの少ししか話していない。はじめて来たときに、彼は話をしたけれど、息をきらしながら、取り乱した感じで話をした。まるで話をするのに慣れていない感じをうけたよ。彼が実際にしたことは行動なんだ。黒のガウンに赤い花の絵を描いたり、黄色の鞄を芝生に投げたり。君に教えよう。あの大きな姿そのものが比喩なのだと。緑の数字が、どこか東方の白い壁で跳ねまわるようなものだよ」

「おい、マイケル」イングルウッドは声をはりあげ、強くなってくる風にあおられたかのように苛立ちをつのらせた。「君はずいぶん空想的になっている」

 

“Well, really,” cried Inglewood, left behind in a collapse of humour, “have I noticed anything else?”

“Have you noticed this about him,” asked Moon, with unshaken persistency, “that he has done so much and said so little? When first he came he talked, but in a gasping, irregular sort of way, as if he wasn’t used to it. All he really did was actions—painting red flowers on black gowns or throwing yellow bags on to the grass. I tell you that big green figure is figurative— like any green figure capering on some white Eastern wall.”

“My dear Michael,” cried Inglewood, in a rising irritation which increased with the rising wind, “you are getting absurdly fanciful.”

 

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