チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第185回

マイケル・ムーンは弁護のためにたちあがったが、ふさぎこんだ雰囲気をただよわせていたので、最初、被告人側の人々は希望を少しも抱かなかった。彼は抽象的な質問につきあうつもりはないと言った。「不可知論者であるほど十分に知っているわけではないから」彼は、やや疲れたように言った。「それに私が精通しているのは、よく知られていて、認められている原理だけです。科学と宗教について言えば、よく知られて、認められた事実とは十分に分かりやすいものなのです。教区司祭が言っていることはすべて、どれも証明されていません。博士たちが言うことはすべて、反証されています。これこそが科学と宗教のあいだにある違いであり、今までもそうでしたが、これからも変わることはないでしょう。しかしながら、こうした新しい発見に、どういう訳か、私は感動してしまう」彼は悲しそうに足元を見つめた。「新しい発見は、年老いた伯母のことを思い出させるのです。彼女も、若い頃は、新しい発見を楽しんでいました。今でも、庭の塀のそばにある古いバケツのかたわらに、ゆらめくポプラ並木の下に見えるようです…」

 

Michael Moon rose for the defence with an air of depression which gave little hope at the outset to the sympathizers with the prisoner. He did not, he said, propose to follow the doctor into the abstract questions. “I do not know enough to be an agnostic,” he said, rather wearily, “and I can only master the known and admitted elements in such controversies. As for science and religion, the known and admitted facts are plain enough. All that the parsons say is unproved. All that the doctors say is disproved. That’s the only difference between science and religion there’s ever been, or will be. Yet these new discoveries touch me, somehow,” he said, looking down sorrowfully at his boots. “They remind me of a dear old great-aunt of mine who used to enjoy them in her youth. It brings tears to my eyes. I can see the old bucket by the garden fence and the line of shimmering poplars behind—”

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