チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第189回

「そんな論文に権威なんかがあるのだろうか?」ピム博士は腰をおろしながら問いかけた。

「ああ、権威ですか!」ムーンはあっさり言った。「そんなものは信仰に基づいているものですよ」

 ピム博士は、ふたたび飛び上がった。「私たちの権威が基づいているのは、かなり正確で、詳細に記してあるものなんだ」彼は言った。

「そこで扱われている分野は、論じたり、検証したりすることができるものだ。弁護人も認めるでしょうが、死とは経験からなる事実なのです」

「私の経験からなるものではない」ムーンは陰鬱に答えると、頭をふった。

「そうしたことは、人生で一度も経験したことがない」

「ああ、たしかに」ピム博士は言うと、かさかさ音をたてる書類のあいだに座った。

「そこで思うのだが」ムーンは同じように憂鬱な声で、ふたたび始めた。「ウォーナー博士のような男は、進化の神秘的な過程において、そうした攻撃をうけるように運命づけられているんだ。私の依頼人スミスは猛攻撃をしたと言われているが、そうしたことがあったとしても、めずらしいことではない。ウォーナー博士の複数の知り合いから手紙をもらっているんだ。それによれば、この非凡なる博士は、知り合いにも同じような影響をおよぼしたらしい。

 

“Would it have much authority?” asked Pym, sitting down.

“Oh, authority!” said Moon lightly; “that depends on a fellow’s religion.”

Dr. Pym jumped up again. “Our authority is based on masses of accurate detail,” he said. “It deals with a region in which things can be handled and tested. My opponent will at least admit that death is a fact of experience.”

“Not of mine,” said Moon mournfully, shaking his head.
“I’ve never experienced such a thing in all my life.”

“Well, really,” said Dr. Pym, and sat down sharply amid a crackle of papers.

“So we see,” resumed Moon, in the same melancholy voice, “that a man like Dr. Warner is, in the mysterious workings of evolution, doomed to such attacks. My client’s onslaught, even if it occurred, was not unique. I have in my hand letters from more than one acquaintance of Dr. Warner whom that remarkable man has affected in the same way.

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