チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第214回

「もちろん」彼は夢見るように続けた。「中にはひとり、ふたり、離れたところから、ありのままの事実をみる者がいるが、そうすると気が狂ってしまう。君は気がついているだろうか? 狂人とは大体のところ、物を壊そうとするか、あるいは考え深い者たちなら、自分を壊そうとする者たちだということに。狂人とは黒幕なんだよ。劇場の舞台袖をさすらう者のように。間違った扉をあけてしまったけれど、正しい場所に出ただけなのだ。物事を正しい角度から見ている。世間一般は―」

「世間一般なんか知るものか」不機嫌なスミスは言うと、片方の拳をテーブルにおとして、漠とした絶望にかられた様子をみせた。

「最初にそれにひどい名前をつけるとしよう」教授は冷静に言った。「無視するのはそれからだ。狂犬病にかかった子犬は、殺されるあいだも、生きるために闘っているのだろう。だが心優しい人間であれば、殺すべきなのだ。同じように全知全能の神も、苦痛から、私達を引きぬいてくれるだろう。私達は死と直面させられるのだ」

“`Of course,’ he went on dreamily, `one or two men see the sober fact a long way off—they go mad. Do you notice that maniacs mostly try either to destroy other things, or (if they are thoughtful) to destroy themselves? The madman is the man behind the scenes, like the man that wanders about the coulisse of a theater. He has only opened the wrong door and come into the right place. He sees things at the right angle. But the common world—’

“`Oh, hang the common world!’ said the sullen Smith, letting his fist fall on the table in an idle despair.

“`Let’s give it a bad name first,’ said the Professor calmly, `and then hang it. A puppy with hydrophobia would probably struggle for life while we killed it; but if we were kind we should kill it. So an omniscient god would put us out of our pain. He would strike us dead.’

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