チェスタトン「マンアライヴ」二部二章第254回

「頼むから、年老いたレディを起こさないでくれるか」ムーンはそう言うと、気まぐれな愛想のよさをみせながらも声をひそめた。「謝罪するよ。もう二度と邪魔をしないから」

妨げとなる言葉が小さな渦となって消え去らないうちに、人々は聖職者の手紙をふたたび読みはじめていた。

「その集まりは、私の同僚のスピーチではじまりましたが、そのスピーチについて何も言うつもりはありません。それは酷いものでした。聴衆の多くはアイルランド人でしたが、衝動的な人々の弱さを露呈しました。集団となって陰謀をたくらむ人々のなかに集められると、その愛すべき善良な性格も失い、他の者たちから区別すると言われているものを認める覚悟もなくしてしまうのです」

 

“Oh, don’t wake the old lady,” said Moon, lowering his voice in a moody good-humour. “I apologize. I won’t interrupt again.”

Before the little eddy of interruption was ended the reading of the clergyman’s letter was already continuing.

“The proceedings opened with a speech from my colleague, of which I will say nothing. It was deplorable. Many of the audience were Irish, and showed the weakness of that impetuous people. When gathered together into gangs and conspiracies they seem to lose altogether that lovable good-nature and readiness to accept anything one tells them which distinguishes them as individuals.”

 

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