チェスタトン「マンアライヴ」二部二章第246回

わたしがぼんやりと思いをめぐらせたのは、「アラビアンナイト」の茶色い紙に描かれた挿絵のことで、そこには豊かだけれども陰鬱な色彩がほどこされ、ソロモンの紋章のまわりに集まった悪魔の姿をあらわしていた。ところで、ソロモンの紋章(シール)とは何だったのだろうか? 封蝋(シーリングワックス)とはまったく関係ないと思う。だが幻想のせいで私は混乱してしまい、厚くたちこめた雲が、大量の粘着性の物質からできていて、不透明な色を帯びているような錯覚におそわれ、またその雲が沸騰した鍋からこぼれて、恐ろしい紋章になっていくようにも思えてきた。

 

I thought dimly of illustrations to the `Arabian Nights’ on brown paper with rich but sombre tints, showing genii gathering round the Seal of Solomon. By the way, what was the Seal of Solomon? Nothing to do with sealing-wax really, I suppose; but my muddled fancy felt the thick clouds as being of that heavy and clinging substance, of strong opaque colour, poured out of boiling pots and stamped into monstrous emblems.

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