2017.11 隙間読書 安田登「能 650年続いた仕掛けとは」

「能 650年続いた仕掛けとは」

作者:安田登

初出:2017年9月

新潮選書

この秋、金沢21世紀美術館で安田さんが演出・出演されいる鏡花『天守物語」を鑑賞した。安田さんの謡が鏡花の日本語のイメージにぴったり呼応していることにまず驚く。そして舞台を楽しそうに生き生きと動きまわる安田さんの姿に能のイメージが変わり、劇場出口で販売していたこの本をさっそく購入した。

この本には能について初めて知ることばかり。豊臣秀吉が財産を費やして能面や能装束を製作して能に貢献、自分を主人公とする能をつくらせたこと。江戸時代、能文体である候文が武士間の共通語として使われていたことなど面白く読む。

芭蕉の「おくのほそ道」も、漱石の「草枕」も、旅で出会う様々な登場人物を能の登場人物に擬して書いている…という安田氏の説明に、私も能を理解して芭蕉や漱石、鏡花を読んでみたいと思う。

能(および能舞台)は、見ているお客さんが脳内AR(拡張現実)を発動するための装置なのです。能の中で謡われている言葉や音は、幻視を促すべく能を刺激する。六義園の石柱と同じです。文楽や落語、浪曲も同じで、話を聴いているうちにお客さんはその情景を想像します。日本で人気のある芸能の多くは、脳内ARを発動させていく機能を持っている。こうなると、日本人は妄想を楽しむために芸能を見に行く、とさえいえないでしょうか。(同書166ページ)

安田氏のこの言葉は、能だけではなく、文楽、落語、浪曲の魅力をよく伝えていると思う。だから文楽や浪曲を観に行くのだなあとと納得、そして能が究極の幻想文学に思えてきた。文楽、義太夫だけでなく、能もしっかり勉強して観たいと思う。そしてそのあとで漱石や夢野久作を読んでみたいもの…。

能の魅力についても、能をもとに書かれた文芸作品についても、能への各アクセス方法についても丁寧に書かれた本である。

読了日:2017年11月27日

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