チェスタトン「マンアライヴ」二部二章第269回

私は疑わしい気持ちにかられ、いくぶん時間をかけながら再び席についた。そして朝になるまで、その席から逃れることはなかった。スミス夫人―平凡さとはほど遠い家庭の夫人としては平凡な名前であるが―、少しぐずぐずと留まって、いささか楽しそうな様子で話をした。彼女があたえる印象とは、内気さと鋭さが入り混じった奇妙なもので、まるで彼女が世界をよく知っているかのようでもあり、一方で無邪気に世界を怖れているようでもあった。飛び跳ねまわり、当てにできない夫をもったせいで、彼女はたぶん少し神経質になったのだろう。とにかく彼女がもう一度寝室にひきあげる頃、この並外れた男のワインも少なくなっていたが、それでも男はワインに弁明をそそぎ、自伝を語り注いだ。

 

“I doubtfully, and somewhat slowly, resumed my seat; and I did not get out of it till nearly morning. Mrs. Smith (such was the prosaic name of this far from prosaic household) lingered a little, talking slightly and pleasantly. She left on my mind the impression of a certain odd mixture of shyness and sharpness; as if she knew the world well, but was still a little harmlessly afraid of it. Perhaps the possession of so jumpy and incalculable a husband had left her a little nervous. Anyhow, when she had retired to the inner chamber once more, that extraordinary man poured forth his apologia and autobiography over the dwindling wine.

 

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