チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第295回

ほんとうに海ときたらアブサンのように、苦々しい感じの緑色をしていて、害のあるように見える有様でした。こんなにも見慣れない海は、そのときが初めてです。空には夜明け前の、嵐の前兆のような闇がたちこめ、そのせいで重苦しい気持ちになりました。つんざくような風が吹きつけ、ぽつんと立っている小さな売店のまわりを駆け抜けていきます。ペンキの塗られた売店では、新聞を売っています。風が海岸沿いの砂丘を吹き抜けていきます。海岸に漁船が一艘見えましたが、その船は日にやけた帆をかかげ、海から戻ってきたあと静かに停泊していました。もう、とても近いところにいます。船から出てきたのは怪物像のような男で、その男は岸辺へとなんとか歩いていきました。水はその男の膝までもきていませんが、でも、たいがいの男なら尻まで浸かるだろう深さだったのです。男は長い草かきのようにも、あるいは棒のようにも思えるものに寄りかかっていました。それは三叉の武器のようで、男をトリトンのように見せていました。男は水に体を濡らし、海藻を幾筋も体にはりつけて、わたしのカフェのほうへ歩いてくると、外のテーブル席に腰かけ、チェリー・ブランデーを注文しました。そのブランデーは店には置いてありましたが、めったに注文する客のいないブランデーです。

 

“Positively the sea itself looked like absinthe, green and bitter and poisonous. I had never known it look so unfamiliar before. In the sky was that early and stormy darkness that is so depressing to the mind, and the wind blew shrilly round the little lonely coloured kiosk where they sell the newspapers, and along the sand-hills by the shore. There I saw a fishing-boat with a brown sail standing in silently from the sea. It was already quite close, and out of it clambered a man of monstrous stature, who came wading to shore with the water not up to his knees, though it would have reached the hips of many men. He leaned on a long rake or pole, which looked like a trident, and made him look like a Triton. Wet as he was, and with strips of seaweed clinging to him, he walked across to my cafe, and, sitting down at a table outside, asked for cherry brandy, a liqueur which I keep, but is seldom demanded.

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