チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第298回

「まわりの連中の話では、そこはイングランドだということだ」この愚か者はいわくありげに答えた。「連中は、そこがケントだと言っていた。でもケントの人間というのは大嘘つきだから、話すことはすべて信じられないことばかりだ」

 「ムッシュー」私は言いました。「一言いわせてください。私は年上だから、若い方の無鉄砲は理解できないのです。私は常識にしたがって生きています。いや、むしろ常識をさらに応用して拡大した、科学と呼ばれているものにしたがって生きているのです」

「科学だと!」余所者は叫びました。「科学がかつて発見したもので、ひとつだけいいものがある。感極まるほど素晴らしい。それは世界が丸いということだ」

 礼儀正しい言葉ではありましたが、彼の言葉を聞いても、私の知性には何の感動もないことを伝えました。「ぼくが言いたいのは」彼は言いました。「世界をぐるりと一周することが、君が今いる場所への最短の道だということだ」

 

“`They SAID it was England,’ said my imbecile, conspiratorially. `They said it was Kent. But Kentish men are such liars one can’t believe anything they say.’

“`Monsieur,’ I said, `you must pardon me. I am elderly, and the ~fumisteries~ of the young men are beyond me. I go by common sense, or, at the largest, by that extension of applied common sense called science.’

“`Science!’ cried the stranger. `There is only one good thing science ever discovered—a good thing, good tidings of great joy— that the world is round.’

“I told him with civility that his words conveyed no impression to my intelligence. `I mean,’ he said, `that going right round the world is the shortest way to where you are already.’

 

 

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