チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第310回

彼は夢見るような瞳で、平原の黒い石の上に腰かけました。そこで動いているものと言えば、列車の機関室からはき出される煙の、長く、ゆらめく影くらいでした。煙の色は紫、かたちは火山のようで、淡い緑のような、冷え冷えとした明るい夜に、熱く、重苦しい雲となってたちこめていました。

「たしかに」彼は大きなため息をつきました。「僕は、ロシアでは自由なのです。言われるとおりです。ほんとうに向こうまで歩いていって、もう一度愛しあうこともできる。おそらくだけど綺麗な女のひとと結婚して、やり直すこともできる。そうすれば誰も僕を発見できない。君のおかげで確信したよ」

彼の口調はどこか妙なところがあって謎めいていましたから、何を言おうとしているのか訊ねて、私のせいで何を確信したのかと知りたくなりました。

“He sat with his dreamy eyes on the dark circles of the plains, where the only moving thing was the long and labouring trail of smoke out of the railway engine, violet in tint, volcanic in outline, the one hot and heavy cloud of that cold clear evening of pale green.

“`Yes,’ he said with a huge sigh, `I am free in Russia. You are right. I could really walk into that town over there and have love all over again, and perhaps marry some beautiful woman and begin again, and nobody could ever find me. Yes, you have certainly convinced me of something.’

“His tone was so queer and mystical that I felt impelled to ask him what he meant, and of what exactly I had convinced him.

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