2018.06 隙間読書 高木彬光「人形はなぜ殺される」

作品のなかで繰り返される「照る照る坊主の歌」は無邪気なようでありながら、ギロチンという類まれな凶器の残酷さと重なって、なんとも気味の悪い雰囲気をかもしだしている。「照る照る坊主の歌」をもじった替え歌も、さらに気味の悪い歌である。でも、この気味の悪さも、その雰囲気をもりあげていく書き方も、「人形はなぜ殺される」の魅力である。

「照る照る坊主 照る坊主

 明日天気にしておくれ

 それでも曇って泣いていたらそなたの首をちょいと切るぞ」

次は精神病院に収容された綾小路子爵の娘が歌う替え歌。

「照る照る坊主 照る坊主

 早くお嫁にやっとくれ

 それでもふられて泣いてたら

 そなたの首をちょいと切るぞ」


高木彬光の言葉のセンスは、小男の詩人「杉浦」が残した事件について仄めかす詩編らしきものによくあらわれている。照る照る坊主の歌、詩人のメモ…を読むだけで高木彬光の言葉へのセンスを堪能、満足してしまう。

「首盗み―表が裏で、裏が表か?

 似すぎた。あまりに。

 入らなければ出られない。

 彼女は実に利口者。

 命の金髪」

「日焼けどめクリーム?

 顔に化粧ができぬなら、せめて着物でうさはらし…といって、囚人にはそれもかなわぬ。

 首をどこかに飾ったら?かくすよりそっちが安全さ。

 フェルゼン? ハザマ?

 金色夜叉ー犯人か?

 似ないなら似せてみようほととぎす」

「人形かついでえっさっさ

 人を呪わば穴二つ

 はかるつもりではかられる

 人形はなぜ殺される?

 月光ー銀河=?

 トイレの前に立っている。

 人形二人、こいつが死んでしまったら、秘密はどこからも、洩れっこないさ。」

でも杉浦は沢村博士の病院も、研究室も、興津の犯行現場もすべて見ていた…ということになるのだろうか?はたして、そのようなことが可能なのだろうか?


事件の舞台になった止水荘は、興津のどのあたりにあるのだろうか? 興津は東海道線にそうように国道が走り、国道と海岸のあいだには西園寺別荘の座漁荘がある。

以下は、止水荘の最上階四方が窓ガラス張りの展望室からの眺めである。

海岸からは、ほとんどニ三軒の深さしかない街の列、そして旧東海道の国道、そして一軒の深さしかない街の列、そして暗渠のようなところを走る東海道本線、そして断崖のようにに切りたった山手にそびえる清見寺、そして裏手の山と、まるで断層のようなこのあたりの地形が、一望の間に見わたせるのだった。

これだけでは止水荘がどこにあるのかわからない。


以下の文を読むと、海方向の窓から東海道線も見えるから山側に止水荘があるのだろうか…とも思う。ただ今でも山側はほとんど開発されず、墓地がひろがっている。

桑田珠江は、研三の腕をひきずるようにして、海手の窓へつれていった。

「ほら、あそこの掘割のようなところが、東海道線の線路ですわね」

ただ山側に止水荘があるとするなら、斜面になっている筈。重いと思われる蝋人形を若い娘一人の力で線路まで運ぶのも、転がしていけばなんとかなるのだろう。これが座漁荘のある国道と海のあいだにあると考えると、少し線路まで距離がありすぎるのではないだろうか?線路に登ってあがらないといけないだろうから、人形をかかえて若い娘の力で登るのは厳しい。

興津の地形について、あまり把握しないまま作品を書いたのかもしれない。


犯人の人格の異常さ、動機も少し弱いような気がした。でも気味の悪い雰囲気を楽しめる作品だと思いつつ頁をとじる。

読了日:2018年6月20日

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