2018.10 隙間読書 鮎川哲也「黒いトランク」

疑問1

近松千鶴夫、馬場番太郎、膳所善造、蟻川愛吉と登場人物のイニシャルがT.TとかB.BとかZ.ZとかA.Aとなるようにしたのは? 展開に必要だった?それからなぜ近松?近松が嫌いだったのか?

疑問2

タイトル英語がINSPECTOR ONITSURA’S OWN CASEになっているけど英訳されてるのだろうか? 黒いトランクをそのまま英語にしなかったのはなぜ?

答えを頂きました→英題「INSPECTOR ONITSURA’S OWN CASE」は北村薫先生の発案ですね。「鬼貫警部自身の事件」だからだそうです。

疑問3

作品発表が1956年。作品の舞台設定は1949年12月10日。1949年は下山事件、国鉄の人員整理の年。…ということも時代設定に影響しているのか?

疑問4

新橋駅について「錦絵にもえがかれ、版画にもほられた。紅葉や蘆花たちの小説にもしばしば」と描写してるけど、作家自身がそういうものに関心があったからの描写では? 鮎川哲也ってどんな背景の作家なんだろうか?

疑問5

近松千鶴夫から手塚太左衛門へ。どちらもTTって必然性があったか? この古色蒼然としたネーミングセンスはどこから?

疑問6

「若松というのは作家の火野葦平がいたところ…(略)…あの辺の沖仲仕や博徒を主題にした短編」とある。1956年当時、火野葦平は生きていた。生存している作家をだしたのは敬愛の念からか?この短編の題は?

疑問7

近松は、骨董品だからと駅の一時預けに3日も預けたようだけど、骨董品をそんなところに預けるものだろうか?

疑問8

「ご夫婦でいて、ご主人のなさることに無関心でおいでになる理由がのみ込めません」と近松夫人にむかって警部が言うけれど、無関心でも不思議ないから不要な言葉かと。この時、鮎川は結婚してなかったのかも?

疑問9

1頁目から読みにくとの感想も聞こえてくる鮎川の文。近松夫人を「グリーンのたきじまのお召しに献上博多のおびをしめ」と書いているけど、ここでグリーンが妙に浮いている感じがして興ざめの感もあり。

答えを頂きました→名文家ではないですし、この作品がメジャーデビューですから、たしかに読みづらいとは思います。 次第に読み易くなります。 短編の「赤い密室」「五つの時計」や、長編なら「人それを情死と呼ぶ」「憎悪の化石」あたりがおすすめです。

疑問 10

近松という人物が思い描けない。そもそも近松みたいな男が、骨董品なんて口にしただけで怪しまれるのでは?

疑問 11

近松夫人について「夫に不利な陳述をみずから進んでするはずもない」との文は意図的なものか?利巧な夫人なら、ここで不利な陳述をして「その万年筆は夫のもの」と証言してもいいのに…と勝手に別の「黒いトランク」を考える。

疑問12

近松は骨董品も、英文毎日も似つかわしくない気が…。不自然さを感じる。

13

昔の切符には行き先が記されていたのだろうか…?

←それは覚えています。硬券時代の切符には必ず降車駅が書かれていました。

疑問14

近松はこれだけの荷物ならボストンバッグを持っている方が不自然では?

疑問15

死体の身元確認した直後に鯛すき…は厳しい。無理しても食べられない。すすめる気にもならないのでは?

疑問16

夫の死体確認をした近松夫人について「彼女は胸中なにを思い、考えているのだろうか」とあるが、ほんと何を考えてたのか?

疑問17

鬼貫も、梅田も、近松夫人が夫の行き先を知らないことに何故疑問をいだくのか?知らない方が自然では?

疑問18

12月の北九州で青い服装ってどんな格好になるものか?

疑問19

「これがなかなか如才ない社交家で、鬼貫を終始あかせなかった。十一時に壱岐の芦辺に寄港すると、博多港からの三時間をひとりしゃべりつづけてきた猟人は(略)」こういうタイプのひとって鬼貫が一番苦手そう…私なら嫌。

疑問20
蟻川は鮎川の名の由来だから親近感をもって書いているのだろうけど。なに、この気障感!自分に似せて書く時、作家はそう書きたくなるのか? ミアシャムパイプ(メアシャムパイプ)なんて初めて知ったけど、笑ってしまいそうなくらいお洒落。

疑問21

「銀座の首つり横丁」って実在したのだろうか? 調べたけど分からなかった。でもインパクトのある地名。

疑問22

鬼貫が由美子の腕に残る殴られた跡の黒い痣に気がついたのは12月23日。しかし殴った男は12月6日の夜には死んでいる。17日間も殴られた痣が残るものだろうか?

疑問23

近松殺害の動機がいちばん強いのは妻、由美子…と私的には考える。そうすると由美子が犯人に犯行をそそのかした可能性も考えられるのでは…?「黒いトランク」では、彼女が完全にシロと読めないのでは?

疑問24

由美子は経済的に困窮しているのに、美しく書かれすぎている。由美子への思い入れの強さがありすぎるのでは?だから鬼貫の最後の言葉になるのかもしれないが。解説によれば、由美子は最初存在してなかったそうだから、矛盾がでるのかもしれない。

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: 2018年, 読書日記 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.