2018.10 隙間読書 世阿弥「葵上」

タイトルの葵上は登場せず、舞台上では一枚の小袖が紫上のかわりに置かれるのみ。物語の中心は、鬼になってしまうほどの六条御息所の源氏への思い、葵上への嫉妬である。

でも舞台の上で雄弁に語られる六条御息所の思いより、見えない存在、見えない世界をほのめかす言葉の「月にはみえじかげろうふ」や「水暗き、沢辺の蛍の影」の美しさが心に残る。


訳はインターネット上のものから。

月をば眺め明かすとも、月をば眺め明かすとも、月には見えじかげろふの、梓の弓のうらはずに、立ち寄り憂さを語らん、立ち寄り憂さを語らん。

どれほど月を眺めて夜を明かしても、月には見えない陽炎のようなものだから、せめて梓弓の側まで立ち寄って、胸の辛さを語ろう。

恨めしの心や、あら恨めしの心や、人の恨み深くして、憂き音に泣かせ給ふとも、生きてこの世にましまさば。水暗き、沢辺の蛍の影よりも、光る君とぞ契らん。

恨めしい心よ。ああ、何と恨めしい心よ。私のこの深い恨みで、たとえ葵上を泣かせたとしても、生きてこの世にいらっしゃる限り、水暗き沢辺の蛍の影よりも光る君と契るでしょう。


舞台では見えないものの存在を感じることができるのだろうか…と楽しみである。

2018/10/13読了

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