隙間読書 トールキン「指輪物語 旅の仲間たち 序章 1.ホビットについて」

「1.ホビットについて」の箇所

指輪物語にチャレンジした人の感想を読んでみると、この「ホビットについて」の箇所がいかに退屈か…という感想をよく目にする。「ホビットについて」の細々としたホビット描写で挫折した…という人も結構いるようである。

でも「ホビットについて」の箇所は、指輪物語の後の構想を示唆するような伏線がはられ、トールキンの交友関係も想像できるような箇所もあって面白いと私は思う。


まずはホビットたちののんびりした暮らしぶりと笑いが伝わるような英文がくる。ホビットの小市民めいた暮らしぶりに、我が身と重なるところもあって思わず笑ってしまう。最初から、なかなかユーモアがきいていると思う。

Their faces were as a rule good -natured rather than beautiful, broad, bright,-eyed, red-cheeked, with mouths apt to laughter, and eating and drinking.

かれらの顔は、がいして、美しいというよりも人のよい顔立ちで、はばひろく、目が明るくて、頬が赤く、口は笑ったり食べたり飲んだりするためにあった。(瀬田・田中訳)

And laugh they did, and eat, and drink, often and heartily, being fond of simple jests at all times, and six meals a day (when they could get then).

また事実しばしば、心ゆくまで、笑って、食べて、飲んだ。いつも軽い冗談がすきで、(食べ物が手に入って)一日六回の食事が取れれば満足だった。(瀬田・田中訳)


やがてホビットとは違うエルフの世界が少しだけ語られるが、遠い国、はるかな世界という感じにあふれ、読んでいる者に憧れをいだかせるのではないだろうか?

Three Elf-towers of immemorial age were still to be to seen on the Tower Hills beyond the western marches.

西の庄堺の先の塔山丘陵には、遠い遠い大昔のエルフの塔が三つ、今なお建っているのが望めた。(瀬田・田中訳)

They shone far off in the moonlight.

それらははるか遠く月明に輝いていた。(瀬田・田中訳)

The tallest was furthest away, standing alone upon a green mound.

一番高い塔が一番遠くにあり、緑の小山の上にぽつんと一つ立っていた。(瀬田・田中訳)

The hobbits of the West-farthing said that one could see the Sea from the top of the tower;

西四が一の庄のホビットたちによれば、その塔の頂に立つと海が見えたという。(瀬田・田中訳)

but no Hobbit had ever been known to climb it.

しかしいまだかつてその塔に登ったホビットのあることは知られていない。(瀬田・田中訳)

Indeed, few Hobbits had ever seen or sailed upon the Sea, and fewer still had ever returned to report it.

だいたい海を見たとか、海を船で渡ったとかいうホビットはまれだし、戻って来てその話を聞かせてくれる者となれば、無いにひとしかった。(瀬田・田中訳)


このホビットについての箇所は、大学の先生でもあったトールキンの周囲にいた同僚たちが念頭におかれているのでは…?と思ってしまう。

and all but Hobbits would find them exceedingly dull.

ホビットでなければとても退屈で(家系図は)読めたものではなかろう。(瀬田・田中訳)

Hobbits delighted in such things, if they were accurate

ホビットたちは正確に書かれていれば、こういうものを大いに喜んだ。(瀬田・田中訳)

: they liked to have books filled things that they already knew, set out fair and square with no contradictions.

かれらにとって本というものは、自分たちがすでに知っていることがたくさんのっていて、なんの矛盾もなく正しくき帳面に記述されていなければならなかったのである。(瀬田・田中訳)

訳は、とても正確に、正確すぎるくらい正確に訳されているような印象をうけた。

ただtunnel はseminal というトールキン独特の言葉もでてくるからだろうか、トンネルと訳されているけれど、ホビットの家と地上をつなぐ通路がトンネルでいいものか? トンネルだと大きめのイメージになるのでは?という気もした。

Shire を「ホビット庄」と訳されたのも素敵だと思うが、一方で頻繁にでてくる言葉でもあり、トールキンの造語でもあるから、シャイアとルビがあればいいような気もする。ただ文庫本なのでルビはいれにくいかもしれないが。2018/10/25

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