2018.11 隙間読書 泡坂妻夫「ヨギガンジーの妖術」

新潮文庫

新保博久氏の解説によれば、本書は長い間入手困難な本であったらしい。そんな本を気軽に読めることに感謝しつつ、ユーモアたっぷりの「ヨギガンジーの妖術」を楽しく読む。

気取ったひと、敷居の高い場所にいる人たちの嫌らしさについて、かすかに皮肉と笑いをこめて書いた作品を楽しんだ。

最初の「王たちの恵み」がいちばん気に入ったのは、そうした皮肉と笑いが効いているせいだろうか? それとも読みはじめで、まだ頭が働いていたせいなのだろうか?


「王たちの恵み」〈心霊術〉

高級ホテルで感じるいやらしさ、気取ったソブリンズクラブの実状もからませていて面白い。


「隼の贄」〈遠隔殺人術〉

ヨギガンジーに占われて晴ればれとした顔になる女性が結末とかぶさる。なんて素敵なヨギガンジー。


「心魂平の怪光」〈念力術〉


泡坂妻夫はイヤな存在とほのぼのさせる存在を組み合わせて作品にするのだなあ。この作品のイヤな存在はニュースキャスター、ほのぼのさせてくれるのは職人さん。しかし、あんなものに、そんな使い方があるとは…とゾッとくる作品。


「ヨギガンジーの予言」〈予言術〉

まるで手品のようなトリック。この作品のイヤな存在は国際線スチュワーデス。


「帰りた銀杏」〈枯木術〉

タイトルがよい、銀杏の木から女の声が…という設定もよい。ただ一番最後の不動丸の言葉はよく分からなかった。


「釈迦と悪魔」〈読心術〉

地方まわりの劇団の若手役者、霧丸の奇妙な行動の理由とは…。その理由も意外、霧丸の美貌も伝わってくるような描写も楽しい。


「蘭と幽霊」〈分身術〉

最後に美保子も加わって三人組となって、ヨギガンジーの変度がパワーアップしている。しかも対象は蘭…という他愛なさで終わっているところがいい。

2018.11.19読了


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